第320回 鉄道総研月例発表会

日時 2018年05月17日(木) 13:30〜16:55
場所 大阪 毎日新聞ビル オーバルホール
主題 車両技術に関する最近の研究開発 

プログラムと発表内容

13:30~13:45
車両技術に関する最近の主な研究開発 ※1

鉄道総研では安全性の向上、低コスト化、環境との調和、利便性の向上を4つの研究開発の方向として、研究開発テーマを実施している。これらの4つ分野につきすべてに、車両に関するものが含まれている。ここでは、車両分野において昨年度まで実施した研究開発テーマで得られた成果の中から、利便性の向上として主電動機による空転制御、鉄道の基礎に関する研究として車輪フラット傷が台車に与える影響などについて概要を紹介する。

発表者
車両構造技術研究部 部長 宇治田 寧

13:45~14:10
空気ばねパンク時の走行安全性評価法 ※1

空気ばねパンク状態で走行試験を実施し、パンク時の車両挙動を調査した。また、空気ばねパンク時の走行安全性評価の指標には、脱線係数に代えて車輪上昇量を用いることを提案するとともに、曲線諸元に応じてパンク時の走行安全性を評価するシートを作成した。さらに、走行安全性が低いケースでは、摩擦緩和剤をレールに塗布することや、台車枠-輪軸間にストッパを取り付けることを提案し、それらの効果を走行試験で確認したので報告する。

発表者
車両構造技術研究部 車両運動研究室 主任研究員 飯田 忠史

14:10~14:35
蛇行動試験における加振方法と走行安定性の関係 ※1

車両試験装置で台車性能を評価する手法の1つとして軌条輪加振による蛇行動試験があるが、加振方法によって蛇行動限界速度が異なる場合がある。そこで、加振方法と蛇行動限界速度の因果関係を明らかにするための試験を実施した。その結果、蛇行動発生の有無を分ける閾値が概ね加振直後の輪軸の左右変位に依存し、加振方法によって蛇行動発生の有無が生じる原因が、その変位の差に帰着できる可能性が高いことを確認したので、その結果概要を報告する。

発表者
車両構造技術研究部 走り装置研究室 副主任研究員 山長 雄亮

14:35~15:00
鉄道車両の車内騒音低減のための吊り床構造の開発 ※1

鉄道車両の車内騒音低減手法の検討の中で、新幹線タイプの試験車体の床構体と側構体の上下方向の振動を比較したところ、側構体の振動が小さいことを確認した。そこで、台車からの固体伝搬音の低減を目指し、床板を床構体に固定する従来の床構造から、側構体より吊り下げる吊り床構造を考案した。試験車体の一部に吊り床構造を試作して定置加振試験を行った結果、数百Hz帯の床板からの音響放射パワーが低減することを確認したので報告する。

発表者
車両構造技術研究部 車両振動研究室 副主任研究員 後藤 友伯

15:00~15:15
休 憩

15:15~15:40
車載蓄電池の熱回路モデルによる温度上昇推定手法 ※1

蓄電池電車などの駆動用リチウムイオン電池の寿命や長期信頼性を検討するためには、走行試験時よりも過酷な条件や、将来の電池劣化を反映した電池温度予測が重要となる。そこで、熱回路モデルを用いて簡便に温度上昇を推定する手法を提案する。交流架線式蓄電池電車(817系改造試験車およびBEC819系)の現車試験を通して、誤差約2℃以下の精度で温度推定できることを確認したので報告する。

発表者
車両制御技術研究部 駆動制御研究室 主任研究員 田口 義晃

15:40~16:05
振動による駆動機器用状態監視システムの営業列車への適用 ※1

気動車の駆動用機器を対象として、振動センサ、振動データを記録する状態監視装置、および異常検知を行う診断プログラムから構成される状態監視システムの開発に取組んでいる。これまで、異物を混入させたエンジン単体試験等により本システムの有効性を確認するとともに、営業列車に適用可能な状態監視システムの開発を進めてきた。本発表では、このシステムを気動車の営業列車に適用した結果について報告する。

発表者
車両制御技術研究部 動力システム研究室 研究員 西谷 幸祐

16:05~16:30
列車運行電力シミュレータによる営業走行の再現 ※1

消費エネルギー削減の観点から、各種省エネ地上設備・車両が検討されていますが、それらの効果予測に、より精度の高いエネルギーシミュレータが求められている。そこで、複数車両間・複数変電所間での電流・電圧の相互作用を詳細に計算し、電圧の変化による加速の変化を運転曲線に反映させる列車運行電力シミュレータを開発している。このシミュレータに、駅間時分から営業時の平均的運転操縦を再現する運転曲線作成機能を新たに組み込み、営業走行時の電力需給傾向を再現したので報告する。

発表者
車両制御技術研究部 水素・エネルギー研究室 副主任研究員 小川 知行

16:30~16:55
滑走制御弁を利用した空気ブレーキの減速度向上手法 ※1

鉄道車両の空気ブレーキは、車輪・レール間の粘着やブレーキ材料の摩擦特性、動力源としての空気圧の伝達特性など、変動や非線形性が大きい要素を多数含んだシステムである。このシステムの性能をソフトウェアの改良によって安定化させる方策として、粘着をより有効に利用する滑走制御手法と、空走時間を短縮する高応答化手法を提案した。そして、提案手法によって滑走時の減速度低下抑制効果、空走時間短縮効果を台上試験によって確認したので報告する。

発表者
車両制御技術研究部 ブレーキ制御研究室 主任研究員 中澤 伸一

※1 第314回月例発表会(平成29年10月18日(水)東京開催)と同じ内容の発表です。