第14回 鉄道総研講演会 「21世紀の鉄道技術 −技術はニーズをどこまで創造できるか−」

鉄道総研講演会
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ごあいさつ

(財)鉄道総合技術研究所 会長 松本 嘉司


 (財)鉄道総合技術研究所は、鉄道の発展と学術・文化の振興に寄与することを目的として1986年に創立されました。
 それ以来、鉄道に関する幅広い研究開発活動を行うとともに、毎年鉄道技術に関する講演会を開催してまいりましたが、早いもので今年で第14回を迎えることが出来ました。
 これもひとえに国土交通省、JRグループをはじめとする多くの方々のご支援の賜物と感謝しております。
 今回の講演会は、「21世紀の鉄道技術−技術はニーズをどこまで創造できるか−」と題し、社会環境の変化と鉄道技術のあり方を展望するとともに、安全、環境、保守、情報、浮上式鉄道、の各分野について、将来ビジョンを含めてご紹介したします。
 皆様のご来場をお待ち申し上げます。


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社会環境の変化と技術開発

−今後の鉄道技術はどうあるべきか−

東京大学 大学院 工学系研究科 社会基盤工学専攻 教授 家田 仁


 鉄道分野は従来常に先導的な技術開発の一翼を担ってきた。東海道新幹線は、従来技術の率直な延長上に飛躍的に新しい輸送市場を切り開いた。鉄道事業者によっては、「寿命半減+コスト半減」という技術開発ミッションをトップダウンで与えることによって、従来にない新しい車両の技術体系を見出してきた。一方、社会環境の変化と共に、技術開発環境もこれまでとは大幅に異なったものに変貌しつつある。具体的には、少子高齢化による輸送ニーズの変化や地球環境保全のニーズの高まりなどである。わが国では、鉄道網が概成しつつある一方で、中小私鉄を含めて重大な事故も発生している。こうした大きな社会変化の中で、社会制度と技術との連携を含めて、今後の技術開発はどうあるべきかについて述べる。


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安全を支える基礎技術

(財)鉄道総研 鉄道力学研究部 鈴木 康文


 鉄道システムを構成する車両、電気、軌道、構造物など設備の健全度低下、自然災害、ヒューマンエラー、踏切など鉄道事故の各種要因と事故防止技術、安全性向上技術、それらに関する鉄道総研におけるこれまでの研究開発について概説する。さらに、より安全な鉄道のために今後取り組むべき課題を整理し、特に車両・軌道・構造物の相互作用、境界領域の問題を中心として基礎的な研究の現状について述べ、将来について展望する。


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環境技術の変遷と今後の展望

(財)鉄道総研 環境工学研究部 前田 達夫


 21世紀の重要な課題の一つに地球環境問題がある。鉄道も、騒音・振動、CO2、大気・水・土汚染物質、廃棄物など、環境に負荷を及ぼしており、これらの環境負荷を低減し、今後も更に環境に優しい鉄道を構築していくことが社会から求められている。今回の発表では、騒音、低周波空気振動、地盤振動、PCB処理など、鉄道総研が取り組んできた環境問題に対する研究成果と今後の展望について紹介する。また、この中で、大型低騒音風洞を用いた空力騒音、空気力学的現象に関する研究成果について紹介する。


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保守改善技術のさらなる開発

(財)鉄道総研 研究開発推進室 長瀬 隆夫


 21世紀当初は前世紀からの継続課題を完成させ、さらに寿命評価、インテリジェント材料等の基礎検討に着手する。停止電気ブレーキ・永久磁石式ディスクブレーキ等による圧縮空気を使用しない車両システム、車軸軸受等台車部品の強度評価体系の構築、コンクリートの内部劣化の効率的診断法・補修工法ならびに構造物の変状検知システム、レール継ぎ目部沈下抑制対策・低廉省力化軌道、高さ・接触力測定等によるトロリ線の長寿命化等が主要な課題である。


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21世紀の情報技術

(財)鉄道総研 輸送情報技術研究部 田中 幹夫


 21世紀に予想される社会状況の変化、情報技術の進展、それに対応した鉄道システムのあり方、そして、それを実現するための情報関連技術の研究開発について述べる。具体例として、鉄道総研で進められている、列車制御、輸送計画、交通機関利用者支援、需要予測、メンテナンス支援等に関する研究の状況を紹介する。


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21世紀の浮上式鉄道の技術

(財)鉄道総研 浮上式鉄道開発本部 古木 勉


 1960年代初めから検討が開始された、東京〜大阪間を1時間で結ぶ超高速大量輸送機関の構想は、21世紀の今日、超電導磁気浮上式鉄道として結実し、山梨実験線において 500km/h の高速連続走行を主体とする実用化へ向けた走行試験を継続中である。この浮上式鉄道の技術のうち、超電導磁石システムの技術と電力変換器のパワーエレクトロ技術を中心に、過去の技術開発の変遷を紹介し、併せて、将来の技術開発の方向を展望する。


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