概要

  • コンピュータ・シミュレーションの課題と動向−原理から現場へ−

    財団法人 日本自動車研究所 副理事長・所長 小林 敏雄

    1970年代に出現した大容量高速コンピュータは科学技術の有り様を大きく変容させた。これを可能にしたのは、科学を基盤とするコンピュータ・シミュレーションの発達であり、また一方で計測・データ処理のコンピュータ化とディジタル・データベースの普及である。コンピュータ・シミュレーションはバイオサイエンスやナノテクノロジーに代表されるような未来産業にとって欠くことのできない基盤技術となっているが、自動車産業等"ものづくり"分野でも、開発、設計、生産段階において存在感を増している。将来の象徴的な姿として、コンピュータ上でクルマが丸々設計され、その性能が分析されるVirtual Designも研究者たちの視野に入っている。コンピュータ・シミュレーション研究の黎明期から現在までの研究の経緯と進むべき道を紹介する。

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  • 鉄道の将来に向けた研究開発−シミュレーションとインテグレーション−

    専務理事  内田 雅夫

    鉄道総研が中長期的視野で取り組んでいる研究開発について、過去5年間の基本計画(RESEARCH2005)における研究開発成果を総括するとともに、2010年度からスタートした現在の基本計画(RESEARCH2010)ならびに20年後を見通した研究開発計画(リサーチマップ)等における中長期的な研究開発の計画概要について述べる。安全性向上、環境との調和、低コスト化、利便性向上等の研究開発目標を達成するために、今後の鉄道総研の研究開発の推進にあたっては、鉄道における諸現象をより精緻に再現し得る高度なシミュレーション技術の構築と、これらを活用しながら技術分野の境界を超えた鉄道システムの総合化(インテグレーション)が重要なキーワードとなるものと考える。

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  • 車両運動の解明と制御

    車両構造技術研究部 部長  佐々木 君章

    車両の運動特性は走行安全性や乗り心地に密接に関っており、その解明は安全性や快適性の向上のために欠かすことができない。ここでは、振動制御システム、操舵制御システム、横風に対する車両の動的安全性向上等、車両運動の解析と改善に係る鉄道総研の研究を紹介する。そして、ベンチ試験において車両運動を解明し、正確な特性評価を設計にフィードバックすることで、車両の性能向上や開発を効率化する、ハイブリッドシミュレータを核とした仮想走行試験環境実現について、コンセプト、試験結果、適用方法、今後の課題・展望について述べる。

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  • 鉄道施設の耐震性向上

    構造物技術研究部 主管研究員  佐藤  勉

    近年の大規模地震による被害経験を踏まえ、数々の地震対策が鉄道事業者において精力的に進められてきた。鉄道総研では、鉄道施設のさらなる耐震性向上のため、耐震評価や対策に関する各種の研究開発を実施してきた。本講演では、断層から表層地盤を伝播する地震動の評価や構造物間の相互作用を考慮した構造物群の挙動評価、鉄道施設の耐震性向上のために開発した各種対策工や耐震評価法、および鉄道施設の耐震対策を合理的に進めるための方法論などの研究開発について紹介する。また、鉄道構造物の新しい耐震設計基準の動向や今後の研究開発の取り組みについても言及する。

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  • 情報通信技術の活用

    輸送情報技術研究部 部長  土屋 隆司

    情報通信技術やセンシング技術の急速な進展は、鉄道の各分野に大きな変化をもたらしつつある。本講演では、まず、情報通信技術、特に移動体通信技術の最近の動向を概観する。次に、具体的な応用例として、列車内ブロードバンド通信サービスの実現を目指して開発を行ってきた、光空間波による地上・車上間の大容量通信技術について紹介する。また、センサ・無線通信技術を活用した鉄道設備のモニタリングシステムの開発について、その主な成果を中心に報告する。さらに、列車が自ら的確な走行速度を決定して、自律的な安全性の確保を図った「知能列車」に関する研究開発の今後の展望についても合わせて紹介する。

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  • ヒューマンシミュレーション技術の活用

    人間科学研究部 部長  鈴木 浩明

    人の動作、行動、判断などを評価・予測するヒューマンシミュレーション技術の急速な発達をふまえ、鉄道総研ではこれらを活用して、鉄道の従業員や旅客の安全性・快適性向上に資するための研究開発に取り組んできた。本報告では、プロジェクトの概要を紹介した上で、ヒューマンシミュレーションの基本概念や実験ツールとしての体験型シミュレータ(列車運転シミュレータ、車内快適性シミュレータ、駅シミュレータなど)の特徴を解説する。ついで、乗務員のワークロード(作業負担)評価、運転士の異常時対応能力向上訓練、衝撃時の乗客安全性評価、駅における旅客流動評価、車内・駅空間の快適性評価などの代表的成果を報告する。

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  • 軌道技術の革新

    軌道技術研究部 部長  石田  誠

    鉄道軌道は、良好な軌道状態を維持するために、常に信頼性が高く経済的な保守管理手法が追求されてきたが、バラスト軌道はもとより、保守作業を抜本的に軽減するスラブ軌道等の省力化軌道においても、より一層の省力化が望まれている。また、沿線環境としての騒音・振動の抑制や少子高齢化社会に対応する新たな保守管理システムが期待されている。ここでは、今後開発が期待されるレール保全技術やバラスト軌道沈下抑制技術を評価するモデルや保守作業を効率化する保守計画支援システム、さらに、より一層の省保守・低騒音を実現するために従来とは異なる形状のレールを用いた新形式軌道を紹介するとともに今後の軌道技術の課題と展望を述べる。

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  • 新エネルギーと蓄電技術

    車両制御技術研究部 主管研究員  秦   広

    省エネルギー、地球温暖化防止は世界的に重要な課題であり、わが国でも産業、民生、運輸の各部門で努力が続けられている。本講演では、鉄道総研のこの分野の研究開発成果を中心に報告する。最初に運輸部門のエネルギー消費、CO2排出の概要と、航空機、自動車での取り組みの概要を紹介する。次に将来に向けた研究開発として重点的に実施してきた燃料電池車両、超電導フライホイール(地上設置)について、開発の背景、目的、成果、今後の課題について述べる。また、架線・バッテリーハイブリッド車両、電気二重層キャパシタによる地上蓄電装置についても紹介する。

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