概要

  • 巨大津波の被害実態と減災技術

    東北大学 教授 今村文彦

     2011年3月宮城県沖を震源としたマグニチュード9の巨大地震および津波が発生した。我が国での歴史上最大の規模であり、沿岸各地で壊滅的な被害を受けた。現在まで判明しているメカニズムについて紹介したい。今回の大震災を人的・物的被害の面から考えると、津波による被害が圧倒的に広大かつ甚大であった。現時点で死者・行方不明者は約20,000名であり、その9割以上が水死者と推定されている。巨大な破壊力で沿岸域での防潮堤、防波堤なども破壊し、被害を拡大化させた。また、鉄道、道路などの交通機関にも多大な被害を生じさせ、我が国における最悪の津波被害となった。 本講演では、津波数値計算や鉄道・車両に対する津波被害の研究レビューを加え、現在までの調査で判明されつつある津波被害の実態と多くの教訓を紹介したい。

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  • 巨大な自然災害に備えるための鉄道技術

     理事 市川篤司

     最近発生する自然災害では、自然外力の巨大化や被害の大規模化が懸念されている。先般発生した東北地方太平洋沖地震は、我が国の観測史上最大の地震であった。今後も東海地震や東南海地震等マグニチュード8を超える巨大地震の発生が予測されている。降雨災害では、ゲリラ豪雨と呼ばれる局所的短時間豪雨が増加しており各地に被害が発生している。また、台風や竜巻等による強風災害の発生がたびたび報じられている。
     本講演では、地震、降雨および強風を対象に、これまで実施してきた防災・減災技術に係る研究開発の体系と内容、および成果を紹介するとともに、巨大な自然災害に備えるための今後の取り組みを展望する。

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  • 東北地方太平洋沖地震の特徴と早期検知

    総務部 次長 芦谷公稔

     我が国の観測史上最大規模となった東北地方太平洋沖地震およびその地震動の特徴を公的機関の観測データや解析成果等を踏まえて概観するとともに、鉄道施設の被害との関係を考察する。また、新幹線に導入されている早期地震検知・警報システムおよびJR在来線や民鉄線等を中心に導入が進んでいる緊急地震速報システムについて、今回の地震時の動作状況等を検証し、巨大地震に対する課題を検討する。さらに、早期地震検知手法の信頼性向上のための今後の研究開発の方向性について述べる。

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  • 地上設備の耐震技術

    構造物技術研究部 部長 舘山 勝

     東北地方太平洋沖地震は、マグニチュード9という未曾有の巨大地震であったが鉄道構造物の被害は限定的であり、これまでの耐震対策への取り組みが効を奏したと考えられる。一方、電柱や駅舎天井などの付帯構造物の被害、度重なる余震による被害など、従来、余り注目されていなかった被害に対する対応が指摘され、今後の現象解明や対策法の提案が待たれている。本講演では、これまで研究開発を進めてきた地盤や構造物の地震時挙動に関する最新の解析技術、ならびに免震や制振など、今回のような巨大地震をも視野に入れた地上設備の耐震対策に関する取り組みについて述べる。

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  • 地震時の走行安全性向上に向けて

    鉄道力学研究部 部長 石田弘明

     巨大地震が発生すると、状況によっては走行中の列車が脱線し、大きな被害をもたらす可能性があると考えられる。鉄道総研では、地震動を受けた車両の挙動解明に関する研究を進め、車両運動シミュレータ、構造物・車両の動的相互作用シミュレータの開発や実台車加振試験による検証を行ってきた。さらにシミュレータを活用して、地震時走行安全性の評価法や地震時に脱線しにくくする方策を検討し、脱線後の2次被害防止策についても提案・評価を行ってきた。本講演では、これらの研究開発状況と地震時の車両挙動の特徴を概説するとともに、地震動による車両の脱線・逸脱を防ぐ方策の事例等、走行安全性の向上に向けた取り組みについて述べる。

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  • 強風から列車を守る

    防災技術研究部 気象防災研究室 室長 今井俊昭

     鉄道車両に転覆の危険が生じる風速は、様々な条件で異なった値をとる。強風に対する安全を確保するためには、危険な強風に列車を遭遇させないように風を監視しつつ運転を規制する技術が重要である。本講演では、風速計の配置や取り付け方法等の強風の監視技術と強風箇所抽出方法、竜巻を含む突風や急激な風の立ち上がりの予測技術の現状を紹介する。また、観測に基づき予想される強風発生確率を使ってリスクを定量的にあらわす方法を提示し、強風対策として防風柵と運転規制ルールをどのように適用するかについて述べる。

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  • 豪雨への備え

    防災技術研究部 部長 杉山友康

     鉄道の防災技術は、開業以来多くの災害を経験して発展してきた。一方最近では、地球的規模の気候変動の影響ともいわれる局所的短時間豪雨に代表されるような豪雨の観測回数が増大しつつあり、これに伴って鉄道でも新たな豪雨災害に向けた減災技術が必要となりつつある。本講演では変化しつつある我が国の降雨状況と鉄道沿線での被災形態の変化の状況とを示した上で、鉄道施設のみならず周辺にも目を向けた降雨に対する危険度評価技術の必要性と、これに対応した鉄道総研が実施している斜面災害や河川災害に対する研究開発の状況について述べる。さらに、今後鉄道総研が先駆的役割を果たして進めるべき豪雨災害の減災に向けた研究開発の展望について述べる。

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