概要

  • 丈夫で美しく長持ちする鉄道構造物

    京都大学大学院 教授 宮川 豊章

    適切に計画・設計・施工・維持管理した場合、コンクリート構造物は極めて耐久性に富む。しかし、そうではなかった場合、変状を示すに至る場合がある。既設構造物の場合、適切な維持管理が要求されることになり、既に構造物がある以上、新設構造物の設計とは異なり、すぐさま何らかの判定が必要とされる。要求性能を念頭に置いた構造物シナリオを基とした点検・評価・判定・対策が必要となるのである。これらの維持管理作業は、構造物の劣化機構を明らかにしたうえで行うことが望ましい。塩害やアルカリシリカ反応などのコンクリート構造物の劣化機構を紹介したうえで、点検手法や補修工法、ストックマネジメントなどの新しい動向について触れる。

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  • 経年劣化の評価と克服に向けたメンテナンス技術

     理事 高井 秀之

    鉄道は車両、軌道、構造物、電力、信号など多くの技術分野から成り立っている複合システムである。鉄道設備のメンテナンスは、車両・地上設備ともに供用期間が長いこと、地上設備については長大であること、風雨にさらされる屋外設備であること、作業時間が列車間合いや列車運行時間外に限られることなどの特殊性がある。このような鉄道設備のメンテナンス技術体系について俯瞰するとともに、経年劣化した設備の健全性評価、あるいは所要の機能の維持が困難な場合の補修や補強方法について、鉄道におけるメンテナンス技術の最近の動向を踏まえて、鉄道総研の研究開発状況と今後の方向について紹介する。

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  • 地上設備の状態監視保全技術と診断技術

    信号・情報技術研究部 部長 土屋 隆司

    列車の安全な走行のためには、構造物、軌道、電力、信号通信等の設備を適正な状態に維持することが不可欠である。設備の劣化、損傷等の経時変化を、より正確かつ高頻度に把握することができれば、設備の不具合に起因する危険事象の回避(リスク低減)や 状態に応じた費用対効果の高い保全計画の策定(保全コスト低減)等が可能となる。近年の情報通信技術やセンシング技術の発展・普及により、設備状態監視を効率的かつ比較的安価に実現できる可能性が高まってきている。本講演では、鉄道地上設備の状態監視保全に関わる基盤技術について概観するとともに、それらの技術を構造物等に適用した事例についても合わせて紹介する。

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  • 鉄道車両の状態監視保全技術と診断技術

    車両構造技術研究部 部長 佐々木 君章

    鉄道の安全を支えるうえで、車両を良好な状態に保つメンテナンスは欠くことのできない課題である。従来、車両の保守は運転実績を元に検査周期を定めて行う定期保全の考え方をベースとして行われてきたが、より合理的で効率の良い保守を実現するために、車両状態を監視することにより故障徴候を早期に検知し、故障に至る前に対処する「状態監視保全」の考え方がクローズアップされてきている。安全性の維持は当然であるが、今後の車両メンテナンスは、コスト低減の側面だけでなく、労働人口の減少など人的リソースの制約からも効率化が重要になると考えられる。この観点において状態監視保全は車両保守の一つの方向性を示すものと考えられ、現在の研究状況、今後解決すべき課題について述べる。

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  • 軌道の健全性維持に向けたメンテナンス技術

    軌道技術研究部 部長 古川 敦

    日本には総延長で約41,000kmの軌道があるが、その大宗は定期的な保守を必要とするバラスト軌道である。これらの多くは、1978年に建造物設計標準(土構造物)が制定される前に建設されており、バラスト道床の沈下・変形のほか、路盤噴泥が見られることも多い。また、バラスト軌道の保守量削減を目的に開発されたスラブ軌道も、初期のものは敷設から40年以上が経過し、一部で劣化が見られる。このように、軌道は漸進的な劣化が避けられない構造物であり、健全性維持のためには、劣化の抑制と効率的な補修が不可欠である。本講演では、「寿命延伸」をキーワードに、軌道の劣化の克服に向けた最近の技術開発成果と今後の展望を紹介する。

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  • 電気設備の健全性維持に向けたメンテナンス技術

    電力技術研究部 部長 兎束 哲夫

    鉄道電気設備メンテナンスでは「事後保全」と「予防保全」が使い分けられており、並行して省メンテナンス設備への移行が進められてきた。電車線設備に関しては、地震時に損傷しにくい鋼管架線柱の導入と、整備新幹線におけるPHC(析出強化型銅合金)トロリ線の実用化などによって省メンテナンスを目指している。また、電気検測車等による検査対象がトロリ線に限られていたことから、ちょう架線などの線条や金具・支持物を対象とした画像処理を用いた検測技術を開発中である。一方、信号設備・変電設備に関してはメンテナンスコスト低減を狙い、状態監視技術の応用が進んでいる。本講演ではこれらの研究開発状況を報告する。

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  • 鉄道構造物の経年劣化克服に向けたリニューアル技術

    構造物技術研究部 部長 舘山 勝

    これまで、経年劣化が進んだ構造物に対しては、主として機能回復の観点から、部分的な補修や補強、取替などの処置が施されてきた。しかしながら最近では、極端に経年劣化が進んだ構造物も多くなり、部分的な処置では対応できないケースも見受けられるようになっている。そこで本講演では、鉄道総研がこれまで取り組んできた、経年劣化が進んだ構造物に対する補強技術について紹介する。また、桁の構造形式を変更することにより発生応力を低減させる方法や、異種部材を組み合わせたリニューアル技術など、既設構造物の機能や性能の抜本的向上を目的とした大規模リニューアル技術に関する最近の研究開発の取り組みについて紹介する。

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