概要

  • 特別講演

    大規模数値シミュレーションが実現する技術革新

    東京大学生産技術研究所教授 革新的シミュレーション研究センター長 加藤 千幸

     原子の運動や電子の挙動、物体の運動、構造物の振動、空気や水の流れなどはその挙動を記述する基礎方程式が確立されているが、その解を理論的に求めることはほとんどの場合不可能である。一方、計算機を駆使してこれらの基礎方程式の近似解を求める計算科学シミュレーションに関しては1970年代から研究が行われ、1980年代から徐々に産業応用も進んでいる。2012年9月にスーパーコンピュータ京が本格的な運用を始めてから3年あまりが経過した。京の登場により、従来よりも桁違いに大規模な計算科学シミュレーションが可能になり、そのような大規模な計算科学シミュレーションを産業応用することによる技術革新に関しても新たな可能性が見えてきた。本講演では、京を利用した最新のシミュレーション成果とそれがもたらす産業上の効果を説明する。

    要旨はこちら(2.8MB)

  • 基調講演

    高度シミュレーションとネットワークによる鉄道システムの革新

     理事 渡辺 郁夫

     鉄道は、車両、構造物、電力及び列車の走行状態などの情報とともに、強風、豪雨、大規模地震などに関する外的情報も常に収集分析して安全に運行を続けている。今後、更に安全性、利便性を向上し、低コスト化を進め、環境との調和をはかりながら維持発展するためには、得られた情報ばかりではなく、測定が困難な情報については高度シミュレーションの解析結果も活用して、ネットワークにより各分野にリアルタイムにフィードバックしていく技術が必要となる。さらに設備の維持管理情報や旅客情報などの各種データや気象予測などシミュレーションの解析結果を組み合わせることにより、新たな知見が得られる可能性を秘めている。このような革新性をもった、鉄道システムの価値を一段と高める技術開発について展望する。

    要旨はこちら(4.8MB)

  • 気象災害ハザードマップのリアルタイム化による鉄道防災ネットワーク構築

     防災技術研究部長 太田 岳洋

     昨今のゲリラ豪雨など気象現象の強大化に対して、気象災害を対象としたシミュレーションによる気象現象の面的推定手法や土砂災害、強風災害、雪崩災害などの災害発生危険度評価手法を開発し、これらの推定・評価結果をGIS上で一元的に表示するハザードマッピング技術を確立したので紹介する。また、近年発展著しい気象レーダを用いた気象予測から災害発生危険度を逐次評価し、ハザードマップをリアルタイム化することが期待されており、リアルタイム情報による列車運行制御や旅客避難誘導などを可能とする鉄道防災ネットワーク、さらには行政・地域・鉄道が一体となった防災ネットワークの構築について展望する。

    要旨はこちら(3.0MB)

  • 沿線環境保全のための連成シミュレーション

     環境工学研究部 主管研究員 飯田 雅宣

     鉄道の高速化においては沿線環境の保全が重要な課題である。高速鉄道の主要な沿線環境問題は、騒音(転動音、構造物音、空力音)、地盤振動、トンネル微気圧波の3項目であり、これらはいずれも固体振動と音響放射、流体運動と音響放射、車両振動と構造物振動というように複数の現象が連成する問題であることから、これらのシミュレーションを連成させた予測法を開発し、事前予測や各種の低減対策の評価に活用しているので紹介する。また、より広範囲にシミュレーションの連携を進めて環境性、安全性などを総合的に評価する今後の取り組みを展望する。

    要旨はこちら(4.7MB)

  • 電力制御のリアルタイム化によるエネルギーネットワーク

     電力技術研究部長 兎束 哲夫

     東日本大震災以降の電力事情から、電気鉄道にはさらなる省エネルギーが求められている。鉄道エネルギーネットワークを構成する運転・車両・地上の各分野において、ハードウェアからソフトウェアにわたる省エネルギー施策の研究開発について紹介する。また、さらなる効率向上を図るためには、車両・地上間のリアルタイム通信と運転実績ビッグデータ解析結果に基づいた予測を活用し、ダイヤを遵守しつつ列車ランカーブ及び変電所を制御しなければならない。開発中の総合的な運転電力シミュレーション手法を活用した今後の電力制御のリアルタイム化によるエネルギーネットワークの考え方について展望する。

    要旨はこちら(3.2MB)

  • 構造物の状態監視ネットワークによる維持管理

     構造物技術研究部長 谷村 幸裕

     近年、経年劣化した鉄道構造物が増加しており、今後、その維持管理に要する労力が増大すると考えられる。一方で、人口減少や技術者不足に対処するため、維持管理の効率化が求められている。そこで、モニタリング技術により構造物の状態監視ネットワークを形成し、その状態に応じた的確な保全を実現するための技術開発について紹介する。また、変状予測シミュレーションに基づく予防保全や、検査における画像の活用、設計・施工から維持管理段階にわたる各種情報のデータベース化、三次元CADをベースにこれらを統合した構造物の維持管理情報ネットワークの構築、更には情報のリアルタイムでの活用など、今後の維持管理技術について展望する。

    要旨はこちら(2.0MB)

  • 鉄道輸送ネットワークにおけるリアルタイムなデータ連携と高度列車運行

    信号・情報技術研究部 交通計画研究室長 深澤 紀子

     情報通信技術の進展により鉄道輸送に関連する多種多量のデータが生成され蓄積されている。輸送量の決定からダイヤ作成までの輸送計画、その計画を実施する運行管理と列車制御において、旅客流動データ、車両走行データ、地上設備のモニタリングデータなど、ネットワークを介した様々なデータを分析し活用する手法と関連するシミュレーション技術について紹介する。また、これらの情報をリアルタイムに有機的に組み合わせ、さらには運行管理と保安制御を緊密に連携させることにより、沿線の災害発生危険度も考慮した列車制御による安全性の向上、状況に適応した柔軟な列車運行による利便性の向上を目指した研究開発を進めている。今後の高度な列車運行技術について展望する。

    要旨はこちら(2.4MB)

  • 地震情報ネットワークと地震災害シミュレータの融合によるレジリエンス向上

     鉄道地震工学研究センター長 室野 剛隆

     わが国には、様々な形で地震観測ネットワークが構築されている。鉄道ではこれらで得られる地震情報を用いて早期地震警報などに活用するとともに、地震時の鉄道線区全体の被害を推定する「鉄道地震災害シミュレータ」の開発に取組んできた。これらの地震情報と鉄道地震災害シミュレータを融合して鉄道路線に沿った地盤の揺れや被害状況を地震時にリアルタイムで予測・提供する技術について紹介する。また、これらの高度化された地震情報は、地震後の点検の合理化など早期復旧に活用することができ、地震に対するレジリエンスを更に向上させることができる。今後の地震防災技術について展望する。

    要旨はこちら(3.5MB)