大型ハイブリッド車用の低コスト長寿命蓄電装置の開発

平成15年4月16日
財団法人 鉄道総合技術研究所

 財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、地球環境問題に対応するため、省エネルギーの鉄道車両の研究開発を積極的に進めております。この度、その一つとして、鉄道やバスなど大型ハイブリッド車用の低コスト長寿命蓄電装置の実用化に目処をつけましたので、お知らせいたします。なお、今回の開発は、鉄道総研と神鋼電機株式会社と大同メタル工業株式会社の三者共同で行いました。
 原理はモーターを回転させてエネルギーを直接蓄えるフライホイール式で、軸受は新しい概念の滑り軸受式です。これにより、大型車用蓄電装置は、急速充放電・高電圧・大出力・長寿命・低コスト等の課題解決が可能になります。

 現在、次代の省エネ自動車の核となる実用的な蓄電装置の開発競争が内外で熾烈を極めている。蓄電媒体としては、電気二重層キャパシタ、ニッケル水素やリチウムイオンといった高性能二次電池、燃料電池などが取り上げられ、各々活発な開発がなされている。鉄道やバスのような高電圧・大出力・多頻度の急速充放電を要する分野にも、こういった蓄電媒体を適用するための研究開発が進んでおり、鉄道総研においても積極的に取り組んでいる。
 その中にあって、日本ではあまり注目されていなかったフライホイール式の蓄電装置は、電気二重層キャパシタに比べて高電圧化し易く、エネルギー密度も多い、確立された要素技術の組合せでできる、急速充放電を繰り返し行っても化学的劣化がない、などの技術的特徴を持ち、低コストで、実用化までのスケジュールや量産時の価格設定や保守費の見通しが得やすいといった経済的特徴がある。
 しかしながら、従来のフライホイール式では、冷却装置などの付属機器を要する、比較的重い、転がり軸受などの疲労保守部品が多い、高速回転時の空気抵抗によるエネルギー損失が大きい、外力による軸受応力の発生、といった課題を抱えていたため、普及していなかった。
 ところが、その後の磁石などの材料、軸受と潤滑油の性能、モーター制御技術などが進歩したため、フライホイール式蓄電装置の適用分野が広がり始めた。例えば、最近になって欧米では、大型ハイブリッドバスのパワーアシスト用蓄電装置や主要都市の地下鉄用地上電源装置、無停電装置、風力発電装置などへ徐々に適用し始めるまでに成長している。
 今回、鉄道総研が国土交通省の補助金を受けて試作し、定置試験や走行試験による評価を経たフライホイール式蓄電装置とは、従来方式の課題を解決するための種々の方策を織り込んでいる。例えば、@モーター内部は密閉構造で減圧、A軸受は世界初のダイレクトポンプ強制潤滑滑り軸受で、磁石の吸引力を併用して油膜上に浮上、Bこれらにより回転損失を従前の1/4に低減させて冷却装置レス化、C回転体は安価な合金鋼材のクラゲ形構造、Dエネルギーの授受は電気的に非接触で行うインバータ制御方式、Eジンバル柔支持方式、などである。
 その結果、蓄電装置の劣化や軸受の転がり疲労が全くなくなり、140万回の充放電サイクル寿命に相当する現時点で最も長寿命で、低コストな実用的蓄電方式となった。600ボルト以上を要する気動車やバスなどの通勤用大型ハイブリッド車両に適しているため、公共交通機関の一層の低公害化や省エネ化の可能性が期待される。



写真1 フライホイール式蓄電装置の内部と軸受部と外観

写真2 充放電試験走行中のフライホイール式蓄電装置



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