平成15年度 文部科学大臣賞【研究功績者】

受賞業績:列車の左右動揺解析及びその適正な抑制に関する研究
受 賞 者:藤本 裕(ふじもと ひろし)
 
【業績】
  鉄道の横揺れは、従来一車両単位の運動として解析されてきたため、新幹線などの高速列車において編成の終端方向に横揺れが増幅する現象に対し、その発生と伝搬メカニズムが解明されていなかった。このため、さらなる高速化に際し、軌道整備や台車改良等による上下動揺の改善は進んだが、列車後方に生じる左右動揺の増幅を効果的に抑制することができなかった。
  氏は、車両間の幌等の拘束をばね要素として表現し、車体間を一定剛性の左右ばねでつないだ編成モデルにより、編成列車を一つの単位として捉えた解析を行った。列車走行時の左右運動について振動モード、安定性等を固有値理論により解析し、安定性の低下によりヨーイングを主体とする動揺が発生して、車体間拘束を介し前方車両から後方車両へ振動エネルギーが伝達されるメカニズムを明確化するとともに、各車両の車体左右振動加速度を定量的に予測するシミュレーション解析モデルを構築した。これに基づき、列車の速度と編成内各車両の左右動揺との関係、乗り心地への影響、各車両の動揺の大きさと位相関係を定量化して、列車全体の左右動揺を効果的に抑制するダンパの取付方法及びその要求性能を明示した。これを用いた車体間ヨーダンパは、高速走行安定性を向上させるとともに、列車動揺の低減効果や信頼性、省エネルギー性に優れており、500系及び700系新幹線電車の全車に採用されている。
  本研究成果は、鉄道の高速化・安定走行に寄与し、利用者の快適性に貢献することが期待されている。

 
【受賞者からのコメント】
  蛇行動などの左右方向の運動解析を編成列車に拡張して、新幹線などの高速列車の運動解析を進めました。その解析や現車試験結果から、編成後方車両がヨーイング振動を起こしやすいことがわかり、それを抑える「車体間ヨーダンパ」の開発と最適化をさせていただきました。ご指導、ご協力頂いた方々に心より感謝申し上げます。今後は、トンネル高速走行時の空気力が編成列車の運動に及ぼす影響を調べ、空力動揺低減を目指したいと考えます。


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