平成19年度 文部科学大臣表彰【科学技術賞(開発部門)】

受賞業績:増粘着材噴射装置セラジェットの開発
受 賞 者:大野 薫 (おおの かおる)
 
【業績】

 鉄道においてはその黎明期から、駆動時の空転防止やブレーキ時の滑走防止用に、車輪・レール間に砂をまく装置(砂まき装置)が広く用いられてきた。しかし砂まきは、大量の砂をまくため、地上設備に不具合を生じる問題があった。また高速域では効率が極端に低下するため、有効な増粘着材手段になりにくかった。
 本開発は、これらの欠点や問題点を解消したものである。ごく少量のセラミックス粒子を高速で車輪・レール間に正確に噴射供給することによって、従来の砂まき以上の高い空転・滑走防止効果が得られる。とくに高速域では、400km/h超の速度でも有効に機能する。
 本開発により、機関車においては砂まき量やランニングコストの大幅低減を実現し、さらに、従来は適用が困難であった新幹線や在来線車両の高速域の増粘着が可能になった。たとえば300km/h運転の新幹線電車では、降雨時の非常ブレーキ距離を従来よりも1000m前後短縮することを実現した。現在その取付け車両数は、路面電車から新幹線まで計1000両を超え、海外での実績も増えつつある。
 本成果は、鉄道車両に必要な加減速性能を確保することによって、その安全・安定輸送に貢献している。また、空転・滑走によって生じる車輪・レールの損傷を軽減することによって、これらの寿命を延伸し、資源の節約に寄与している。


 
【受賞コメント】

  新幹線や在来線の最高速度向上を念頭に置いて開発を始めた本手法が、結果としてその範囲を大幅に越え、いまでは新幹線から路面電車まで、砂まき装置全体の代替手法としてあらゆる車種に展開することができました。本手法の開発と広範な普及の実現には、多くの方々のご指導、ご協力をいただきました。心より感謝申し上げます。


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