平成20年度 全国発明表彰の受賞について
財団法人鉄道総合技術研究所の役職員が全国発明表彰を受賞しましたのでお知らせいたします。 なお、表彰式は、6月17日(火)15時から ホテル オークラ(東京都港区)において行われました。
「レールと並行した縦マクラギが理想」との考えは1940年代から提唱され、フランス、ソ連、日本などで開発が試みられた。しかし、左右の縦マクラギの連結構造に弱点を抱えたり、連結構造を改良した形式では過大な断面・重量となるなど、いずれも実用化には至らなかった。 本発明では先ず、実現困難とされてきた長尺(6〜12m)かつ小断面のコンクリート製縦マクラギ(「ラダーマクラギ」)をコンクリートと鋼部材を強固に連結した混合剛結構造により実現し、このラダーマクラギを用いて、バラスト・ラダー軌道ならびにフローティング・ラダー軌道(両者を総称して「ラダー軌道システム」)を開発・実用化した。 バラスト(砕石)道床上に敷設するバラスト・ラダー軌道は、横マクラギの在来軌道がもつ「軌道狂いが日常的に発生する難点」を克服して抜本的な保守省力化を実現するとともに、雨・地震災害に対する安全性を格段に高めることができた。 高架橋・橋梁等の人工路盤上に浮かせて敷設するフローティング・ラダー軌道は、その優れた防振効果により、スラブ軌道など従来の直結系軌道の弱点であった騒音・振動問題をほぼ解消することができた。特に、鋼橋上への導入では静粛な鋼鉄道橋が実現されている。本軌道の低騒音・低振動性と軽量性を活かして、低建設コストかつ高耐震性の新形式高架橋・橋梁の開発も進めている。 ラダー軌道システムは、JRおよび大手私鉄をはじめとする国内17社の鉄道事業者が導入に着手し、本格的な普及が図られつつある。また、21世紀に相応しい軌道システムとして国際的な価値を有し、米国、欧州、中国、韓国、台湾において基本特許を取得して、北京地下鉄等に導入が開始された。
本発明の原点は、1985年に開始したPC横マクラギの衝撃挙動の研究にあります。PC横マクラギがバラスト中に浮かんでいるかのごとく不安定な挙動を観察したのが動機となり、1940年代に試行されたPC縦マクラギを見直してみたいと思うようになりました。1993年から開発を始め15年もの長き時が過ぎましたが、開発・試験敷設・普及の各段階で、総研はもとより、鉄道会社、協力会社、メーカー、商社の多くの方々のご指導・ご協力を頂きました。ここに心より感謝申し上げます。
本発明は、地震発生時に主要動(S波)が到来する前に地震の影響を判断し、警報を発して地震被害を軽減することを目的として、単独観測点で検知した地震波の初期微動(P波)数秒のデータから地震諸元(震央位置やマグニチュード)を推定する方法を提供する。 同様の目的で開発された方法として、新幹線の制御に用いられている早期地震検知・警報システム(ユレダス)の方法があるが、この方法は初期微動の卓越周期からマグニチュードを推定することが特長である。しかし、規模の大きな地震ほど地震断層全体の破壊に時間を要し、マグニチュード8級の地震では最終的なマグニチュードの同定には10数秒以上の時間がかかると考えられる。よって、観測された初動部数秒のデータから大地震を含むあらゆる地震に対して正確に規模を推定するのはそもそも限界があった。 これに対し本発明では、初期微動の形状に着目し、初動の振幅増加率から震央距離を求める方法を確立した。また、P波の方向から観測点から見た震央方位を求め、さらに、推定した震央距離と初動部の最大振幅からマグニチュードを推定する方法を開発した。 本発明により、地震を検知してから約2秒で震央位置を推定することができ、また、その後の初動部の最大振幅をモニターすることにより逐次マグニチュードを決定することができる。これにより、従来の方法では限界があった大地震にも適用が可能となった。また、従来よりも地震諸元の推定精度が高まり、さらに、誤警報の要因となる各種の観測ノイズを識別する性能も向上した。
「一つの地震観測点の初動数秒のデータで震源のいったい何の情報が得られるのか」この問いに答えるために、膨大な地震動記録を眺めながら日々試行錯誤を繰り返し、今回の方法を考案しました。さらに、本方法を用いた早期警報用の地震計を開発し、新幹線のユレダスの後継機や気象庁の全国の地震観測網に採用することができました。しかし。地震計の開発にあたっては様々なトラブルが発生し、それら一つ一つの原因究明と対策を実施することにより実用化にいたりました。この間、多くの方々のご協力、ご指導、ご鞭撻を賜りました。今回の受賞は、こうした方々のご協力の賜物であります。ここに心より感謝申し上げます。