平成20年度「日本鉄道賞表彰選考委員会特別賞」受賞について


平成20年10月15日
財団法人鉄道総合技術研究所

財団法人鉄道総合技術研究所は、新エネルギー・産業技術総合開発機構 殿からの委託を受けて開発した架線・バッテリーハイブリッドLRV「Hi−tram(ハイ!トラム)」の研究開発に対して、平成20年度「日本鉄道賞 表彰選考委員会特別賞」を受賞しました。
 表彰式は10月14日(火)18時から ザ・プリンス パークタワー東京(東京都港区)において行われ、理事長 秋田 雄志が「鉄道の日」実行委員会(会長:中村英夫 武蔵工業大学学長)より表彰を受けました。

平成20年度 日本鉄道賞表彰 選考委員会特別賞
  財団法人 鉄道総合技術研究所
  「車載の電池でもっと省エネ。架線がなくても快走!」
  選考理由
鉄道が環境に優しい乗り物と再認識される中で、車載用大出力電池を開発し、車載電池だけで走行でき停留所停止時に急速充電する路面電車の走行実験を行って実用化への道を切り開いた。また、「架線なし」路面電車は、まちの美観にも寄与するものと評価できる。
取組事項の紹介
  • 車載用大出力リチウムイオン二次電池の開発
     回生ブレーキの失効を防止して、さらに省エネルギーな電車を開発するため、車載用大出力リチウムイオン二次電池を開発しました。これにより、回生パワーを消費する加速中の電車がいないときには、この電池に充電することで回生ブレーキが有効に動作します。
     リチウムイオン二次電池は各種のエネルギー蓄積媒体の中で最もエネルギー密度が高い、いいかえれば小型・軽量という特徴があります。170mm×47mm×133mmで30Ahという単位電池(セル)を多数直並列接続して、605V、72kWh、600kWという大出力な電池を2トンで構成することができました。


  • ハイブリッド制御用電力変換装置の開発
     加速に必要なパワーを、架線からの分と車載電池からの分を任意に振り分けることができる電力変換装置を開発しました。100%架線からに設定すれば従来の車両と同じになり、100%電池からに設定すれば、「架線レス」運転になります。また、架線からの最大電流値をセットすれば、変電所のピーク電力抑制に使うことができます。回生ブレーキの時には、どれだけ架線に返して、どれだけ電池に返すかを任意に設定できます。


  • 車両走行試験
     試作した大出力電池を積んだ車両のブレーキ中にパンタグラフを下げ、回生失効を模擬(回生電流が架線側に返らない)した試験を行いました。その瞬間にそれまで架線に返っていたブレーキパワー(電流)が車載の電池に流れました。その切り替わりもスムーズで、回生失効を防止できることを確認しました。


  • 急速充電方式の開発
     「架線レス」での運転の実現のためには、現在の停車時間の中で急速充電できるシステムの開発が必須です。折り返し駅や乗降が多く停車時間の比較的長い停車場で充電できるよう、地上に数mの長さの剛体架線を設け、停車時にパンタグラフを上げてここから大パワーで充電する方式を考えました。停車中の大電流集電による溶着がないことを基礎実験で確認し、大電流が車軸軸受を流れることによる軸受損傷の防止のための方策も盛り込みました。鉄道総研構内に設けた剛体架線での試験では1000Aで60秒集電できました。


  • 車載電池で走れるLRVの開発
     開発したリチウムイオン二次電池を搭載した架線ハイブリッドLRVを開発しました。13mの長さで定員44名です。「架線レス」での運転にも対応できるよう上記の急速充電システムなどを取り込んでいます。鉄道と軌道の直通運転の可能性も視野に入れて、最高速度は70km/h、架線電圧は600Vだけでなく1500Vにも対応しています。札幌市で4ヶ月間、延べ2000km以上の走行試験を行いました。エネルギー消費量の改善度合いは最高速度、駅間距離などで大きく変わりますが、鉄道総研や札幌市での走行試験結果を踏まえるとエネルギー消費量約10%の改善でした。また、鉄道総研での走行試験で、一回の充電で約33km、2時間にわたって営業を想定した走行パターンで走ることができました。
 
写 真: 「鉄道の日」実行委員会 森地 茂 委員長 より表彰状を授与される 理事長 秋田 雄志
 
写 真: 架線・バッテリーハイブリッドLRV「Hi−tram(ハイ!トラム)」
 
[日本鉄道賞表彰選考委員会]
  委員長  森地   茂 氏 財団法人運輸政策研究機構 運輸政策研究所所長
  委  員  黒野 匡彦 氏 成田国際空港株式会社 取締役兼執行役員 特別顧問
  委  員  白石 真澄 氏 関西大学政策創造学部 教授
  委  員  柳島 佑吉 氏 産業経済新聞社 客員論説委員
  委  員  富澤 秀機 氏 テレビ大阪株式会社 代表取締役会長
  委  員  北村 隆志 氏 国土交通省鉄道局長(「鉄道の日」実行委員会副会長)
 

 「日本鉄道賞」は、「鉄道の日」創設の趣旨である「鉄道に対する国民の理解と関心」をさらに深めるとともに、鉄道の今後一層の発展を期することを目的として、平成14年に創設された表彰制度です。



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