可変減衰上下動ダンパによる制振システムを開発しました

財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、低コストで乗り心地向上が可能となる可変減衰上下動ダンパによる制振システムを開発しました。

本システムは、JR九州で平成23年3月12日に運行を開始する観光特急列車「指宿のたまて箱(指宿枕崎線 鹿児島中央〜指宿間 1日3往復)」に搭載され、鉄道車両用の上下制振システムとして、世界で初めて実用化されます。

ローカル線などでは、レールの継目を走行する際の周波数1〜2Hzの振動成分が乗り心地を悪くする主たる原因となっています。つまり、この周波数の車体上下方向の振動を低減することが乗り心地向上に効果的です。

振動を抑制する方策として、アクティブサスペンションや空気ばねの減衰制御による手法が提案されていますが、前者は高性能である反面、高コストとなる傾向にあります。後者は低コストで既存車両への適用が容易である反面、制振性能が十分ではありませんでした。鉄道総研では、コストと制振性能をバランスよく両立させる制振システムとして、車体を支えるばね(まくらばね)と並列に上下方向の可変減衰機能を持つ油圧ダンパを取り付け、このダンパの減衰力を車体の振動に合わせて制御する制振システムを開発しました(写真、図)。このシステムを在来線車両に取り付けた走行試験の結果、各周波数における振動の強さを示す「振動加速度パワースペクトル密度(PSD)」のピーク値を、1/3〜1/5に下げられることを確認しました。

このシステムは、上下動ダンパ受けを設置することで、既存車両にも取り付けが可能です。また、車体の振動状況からダンパの故障を検知する自己診断機能を有し、故障発生時には自動的に制御を停止して通常のダンパとして機能させることにより、車両の走行に支障を与えないよう配慮しています。

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(写真 可変減衰上下動ダンパの取り付け状態)
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(図 可変減衰上下動ダンパによる制振システムの概念)