平成23年度 文部科学大臣表彰の受賞について

公益財団法人鉄道総合技術研究所の職員が文部科学大臣表彰を受賞しましたのでお知らせいたします。

1.平成23年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)

受賞業績:炭素系パンタグラフすり板の摩耗特性評価手法の開発
受 賞 者:材料技術研究部
部長
くぼ しゅんいち
久保 俊一
材料技術研究部
摩擦材料研究室 主任研究員
つちや ひろし
土屋 広志

平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者等の決定について(文部科学省Webサイト 報道発表)

受賞業績等と受賞者からのコメント

受賞業績:炭素系パンタグラフすり板の摩耗特性評価手法の開発
受 賞 者:久保 俊一 (くぼ しゅんいち 公益財団法人 鉄道総合技術研究所)
土屋 広志 (つちや ひろし  公益財団法人 鉄道総合技術研究所)
【業績】

JRの直流電車では、パンタグラフすり板に導電性・強度は高いがトロリ線摩耗が多い焼結合金を使っていたが、トロリ線摩耗の少ない材料への転換が望まれていた。一方、トロリ線摩耗が少ない直流電車用炭素系すり板が開発されたが、実車両での性能評価には時間を要したため普及が進まず、実車両でのすり板の性能を定置試験装置で簡便・的確に評価する方法が望まれていた。
 本開発では、定置試験装置と実車両での実験、及び摩耗と使用条件の調査から、すり板の摩耗率と使用中に発生したアーク放電の諸量との相関性を見出して、実車両でのすり板の摩耗特性を定置試験装置で推定する評価手法を確立し、またこの手法を使いすり板の新たな改良策を考案した。
 本開発により、実車両での炭素系すり板の耐摩耗性の推定が容易となり、炭素系すり板の実用化が短期間で可能となって普及が進み、また評価結果の材料改良への反映も容易となって鉄道事業者の要望に応えた材料も開発され普及した。
 本成果は、炭素系すり板の普及や新たな材料の開発を促して、トロリ線の摩耗低減、架線設備の保守軽減、及びトロリ線やすり板に関わる故障減少に貢献し、公共輸送機関である鉄道の効率的運営と安定輸送に寄与している。

主要特許:特許第3987656号「摺動集電用チタン銅炭素複合材料、及び摺動集電用チタン銅炭素複合材料の製造方法」
主要論文:「カーボン系パンタグラフすり板の摩耗特性」、電子情報通信学会技術研究報告EMD99-54、Vol.99、No.360、p.7〜12、1999年10月発表
【受賞コメント】

トロリ線の摩耗が少ないカーボン系すり板は、国鉄改革前後に先輩方により開発され、私たちはそれを引き継ぎ普及と改良に取り組みました。実車両でのすり板摩耗には様々な要因が影響し予測は容易でなく、評価方法には未だ至らぬ部分があり改良が必要と考えています。一方、C/C複合材(炭素繊維強化炭素複合材)のすり板は、鉄道事業者の方々の「金属のようにネジ止めできる炭素材を」とのご意見も受け開発を進めました。いずれも実用までには鉄道事業者、大学、炭素材料メーカなど多くの方々のご指導、ご助力をいただきました。今回の受賞はこれら全ての方の力が結実したものであり、改めて心より感謝申し上げます。

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久保 俊一
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土屋 広志

(関連研究室)材料技術研究部 摩擦材料研究室

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写真:表彰状を手にする科学技術賞(開発部門)を受賞した
久保 俊一(左) と 土屋 広志(右)