平成24年度 創立記念日記念式典について

公益財団法人鉄道総合技術研究所は、平成24年度創立記念日記念式典を下記の通り開催しましたのでお知らせいたします。

1.日  時平成24年12月10日(月) 9:30〜12:00
2.場  所公益財団法人鉄道総合技術研究所 国立研究所 講堂

3.式 次 第
(1) 会長挨拶
(2) 表彰等
  ○ 研究開発成果賞業務成果賞
  ○ 研究開発成果褒賞業務成果褒賞
  ○ 研究開発奨励賞
  ○ 成果功労賞
  ○ 所内表彰受賞者代表答辞
  ○ 永年勤続15年表彰(10名)
  ○ 永年勤続15年表彰受賞者代表答辞
  ○ 資格等取得者への奨励金および記念品授与
     (博士号取得者10名、技術士取得者4名)
(3) 理事長挨拶
(4) 記念講演
  「日本企業に今大切なこと  創造する自律分散フロネシス」
一橋大学名誉教授野中郁次郎氏

【会長挨拶 要旨】

今年から、次の基本計画の策定が始まっていますが、研究とは、新しい物質やメカニズムなどを創り出すという夢のある知的な作業のことで、同時にその成果を役に立つ形で、技術開発やイノベーション、さらには産業の創生につなげていくことが求められます。大学などと違い、鉄道総研のような応用研究所では、このようなアウトカムというものを求める出口志向型の研究が重要なことになります。出口志向型であっても、研究が役に立っているということが、研究者自体の主観ではなく、鉄道事業あるいは鉄道産業という社会の中で正当に評価されると言うことが必要です。

具体的な例で、鉄道のエネルギーというものを例にとり、研究の内容について考えてみたいと思います。鉄道は、最終エネルギー消費の中で、我が国全体としてはわずか0.5%の範囲しか消費しておりません。しかし、費用対効果という観点では、単位電力消費量当たりの売り上げは機械産業に比べて約1/5、鉄鋼業と比較しても2/3程度です。このように鉄道のエネルギー問題は、よく言われているような環境問題と言うよりは、まさに生産性、費用対効果としての問題が非常に大きいということを認識すべきです。

鉄道では、エネルギー源から運動エネルギーなど別のエネルギーへ転換する過程で、乗客へのサービスが実現されます。エネルギーの最後の行き先が熱や振動ですと環境に影響を与えますし、逆にその行き先から元に戻す、リユースするようなことも可能です。つまり複雑な経路でエネルギーを転換しながら使い、一つのシステムを構成しているというのが鉄道のエネルギー問題であると言えます。このようなエネルギーネットワークを総合的に考えて、ネットワーク全体として最適になる点を見つけなければなりません。

さらに、21世紀は情報ネットワークの世紀であると言われます。エネルギーシステム全体に情報ネットワークをかぶせ、リアルタイムに情報を取得し、それによって全体として最適化するというのが鉄道のエネルギー問題を解決する最後の姿ではないかと考えられます。スマートグリッドなどと呼ばれているものがそうですが、単に一つのものの最適を考えるのではなくて、全体システムとして最適を考えるというものです。鉄道の研究開発においても、個別の装置・設備の技術を積み上げて行くプロセス・アプローチではなく、全体を一つのシステムと見て、その中で相互の関係をまず把握し、問題となる点を抽出して対応してゆくシステムズ・アプローチが大切です。それにも増して重要なことは、「新しい」「役に立つ」といった概念が、この情報ネットワークの時代においては、より客観的に広く捉えられなければならないという点です。「新しい」という点では、自分たちの過去の関係の中だけで考えるのではなく、新しい仲間を作り、より広い視野を求めていくことが求められます。同じように「役に立つ」という点においても、積極的にユーザーと一体化してお互いに研究内容を評価し合えるような環境を創り出していくことが非常に重要なことだと思います。

皆さんがこのような点に配慮して、研究を進め、あるいは計画を策定していただくことをお願いします。

  • fig 1
    写真 記念式典において挨拶する会長 正田 英介

1.研究開発成果賞
件 名乗り心地を向上する低コスト制振装置の実用化
受賞者車両構造技術研究部 車両振動 主任研究員  菅原 能生
車両構造技術研究部 走り装置 副主任研究員 小島  崇
車両構造技術研究部 走り装置 主任研究員  風戸 昭人
概 要車体の上下剛体振動を効果的に制振する低コストな装置を開発し、営業車両への採用に結びつけた。
件 名大規模振動台実験と大変形解析による斜面の地震時安定性評価
受賞者自然斜面地震時安定性評価グループ(10名)
概 要地震時の斜面崩壊メカニズムを解明して斜面の変形解析手法を独自に開発し、斜面安定評価法の体系化を図った。
件 名弾性構造型合成制輪子の開発
受賞者車両制御技術研究部 ブレーキ制御 主任研究員  狩野  泰
車両制御技術研究部 ブレーキ制御 副主任研究員 嵯峨 信一
元 車両制御技術研究部 (現:JR北海道)    下田 恵輔
元 車両制御技術研究部 (現:JR四国)     新山 正剛
概 要レール湿潤時のブレーキ性能を確保するとともに、車輪踏面の温度を抑制することで車輪ダメージの軽減を図った。
2.業務成果賞
件 名貨物車の走行安全性向上に関する技術指導
受賞者車両構造技術研究部 車両運動 主任研究員 中橋 順一
総務部 (出向中)            金元 啓幸
軌道技術研究部 軌道管理 研究員     小木曽 清高
軌道技術研究部 軌道管理 研究室長    三和 雅史
概 要車両、軌道の両面から走行安全性向上策の検討、提案を行い、JR会社に貢献した。
件 名新幹線地震情報監視システムの導入他
受賞者早期地震防災システム受託推進グループ(7名)
概 要早期地震防災システムを開発し、輻輳する受託業務を顧客の要望に合わせて完遂させ、当該システムの普及を図り収益事業に大きく貢献した。
3.研究開発成果褒賞
受賞:5件、対象者:18名
4.業務成果褒賞
受賞:4件、対象者:57名
5.研究開発奨励賞
件 名圧縮波形の理論解析に基づくトンネル微気圧波の高精度予測手法
受賞者研究開発推進室 風洞技術センター 副主査 宮地 徳蔵
件 名震源および地点特性を考慮した確率論的地震動予測手法
受賞者構造物技術研究部 耐震構造 研究員 坂井 公俊
6.成果功労賞
件 名東北地方太平洋沖地震の被災調査および復旧支援
受賞者東北地方太平洋沖地震復旧支援グループ(110名)
概 要東北地方太平洋沖地震による鉄道の被災状況の情報収集、分析、現地調査、復旧に向けた技術指導を迅速に実施し、JR会社等に貢献した。