公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、平成25年度創立記念日記念式典を下記の通り開催しましたので、お知らせいたします。
1.日 時 | 平成25年12月10日(火) 9:30〜12:00 | |||||||||||||||||||||||||
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2.場 所 | 鉄道総研 国立研究所 講堂 | |||||||||||||||||||||||||
3.式 次 第 | ||||||||||||||||||||||||||
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【会長挨拶 要旨】 |
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第27回の創立記念日にあたりまして、鉄道の技術開発の方向性とも絡めて、最近流行のスマートシステムと鉄道との関わりについて考えているところをお話しします。 10年ほど前に米国でスマートグリッドという概念が提案されて以来、家電や自動車などあらゆる分野でスマートと称したものが考案され、開発の対象になっています。鉄道の分野でも「エコレール」に続くのは「スマートレール」となりそうな印象があります。ところで「スマート」の意味について考えてみますと少しはっきりしません。スマートグリッドが出現した際、それまで別々のインフラであった電力供給システムと情報通信ネットワークを融合して、供給側から需要側へただ流していた電力を、供給システムの中で制御をして、環境性・信頼性が高く、品質の優れた電力として自由な方向に流す新しいエネルギー供給形態を提案したという意味で概念は極めて明快でした。その後スマートシティやスマートコミュニティなどと拡大するにつれて意味が不明瞭になっています。スマートという語の意味を調べてみますと、いろいろな定義がありますが、工学的システムに対しては”operated by automation, guided missile, intelligent” が対応するように思います。元々は「鋭い」「刺激を与える」という意味のようですが、非常に幅が広いため誤解を与えやすく、日本語ではスタイリッシュな感覚が強いのではないかと思います。 さて鉄道のスマート化に戻りますと、鉄道もまた運用や制御のために通信情報システムを持っていますので、スマート化とは何を取り入れるのかという課題になります。一つはスマートの定義にある ”intelligent” に対応するもので、従来にない公共ネットワークとの連携であり、それを通じて、ドアツードアのトリップを構成する輸送機関の予約プラットフォームの構築などがあります。ここに将来的にはウェアラブル端末が入ってくると思いますが、利便性の向上に大きな可能性を持つ一方、信頼性・セキュリティの課題が関わってきます。 次に、”automation” に対応するのは鉄道の自動化と言えます。すでに自動運転システムなどは導入されていますが、昨今海外で発生した鉄道事故事例を見ても、独立した軌道を持たない道路交通のITSなどと比較すると技術革新の余地は大きいのではないでしょうか。 ハードウェアの側面でも、埋め込みソフトなどの普及は進み、大量の情報が利用できる反面、システムの中に利用者が介入できないということもあります。自動化に対して人間がどこまで協調をとるか、いわゆるCPS(Cyber-Physical System)としての課題に鉄道がどのように取り組むかも大きなチャレンジです。同時に、このようなスマートシステムを構築するには、評価指標そのものがスマートさを明示していることが重要です。鉄道分野では利便性の指標の議論はされていますが、環境やリスクなどの評価はこれからの課題です。 次期研究開発計画の中で、このような課題の存在を十分意識し、スマートの定義にあるように鋭い、社会に刺激的な研究開発を進めて頂き、情報通信や制御の手法を技術開発にさらに活かすことによって、いわば「スマート研究所」のような姿を目指して頂きたいと思います。 |
【理事長挨拶 要旨】 |
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第27回の創立記念日にあたり、これまで頑張ってこられた鉄道総研の役職員の方々に感謝を申し上げますとともに、新しい時代に向けてお話をさせていただきます。 東日本大震災では鉄道も被害を受けましたが、そのような状況の中、鉄道の永続的な発展に向けて我々が何をできるのかということを常に考えていかなければなりません。鉄道の発展を通じて豊かな社会をつくると言う目的の中で、我々の大きな役割は三つあるのではないかと思います。一つめは研究開発を着実に進めること、二つめは、JR会社などからの要請もありますが、中立的・第三者的な立場での評価を行うこと、三つめはグローバル時代にあって世界の鉄道をリードしてゆくことです。 このような大きな三つの役割で活動を進めてゆくにあたってのキーワードは「ダイナミクス」ではないかと思います。鉄道は移動体ですから、動くものを対象とするという点でもまさにダイナミクスでありますが、それだけではなく、ダイナミクスには迅速に対応すること、社会の変化に対応して先を見越すこと、革新的であることという意味もありますので、我々は常にこのような精神を持っていかなければなりません。 加えて、ビジョンを持つことが必要です。この27年間、浮上式鉄道の開発、また新幹線の高速化や環境との調和、安全性の向上などに取り組んできました。これからの10年、15年といったスパンでも、我々が何を目指すかのビジョンを作ったらどうかという提案をしてきました。皆さんからも意見を出して頂きましたが、総じてビジョンを立てると言うことについて賛同する意見が多かったと思います。 さて、そのようなダイナミクスを盛り上げるために必要なことは、人材であると思います。ダイナミクスとはもともとギリシア語で強力なという意味があり、前理事長が「逞しい研究者」の育成を求められたように、皆さんの逞しさがこれを実現するのに必要であると思います。その方法にはいろいろなものがありますが、そのひとつが海外へ出ることだと思います。私のかつてのイギリスでの留学経験から申しますと、一人で行くということは人に頼らない気持ちが出てきて、その人を非常に成長させるものではないかと思います。特に多くの若い方には海外に出て頂きたいと思います。 今後ICTの活用など、新しい技術開発をもって多様なニーズに応えていく必要があります。高い品質の研究開発によって信頼を得てゆくことが必要であり、健康な心身をもって、この使命の達成に向けて全員一丸となって大いにチャレンジをしていきたいと思います。 |
1.研究開発成果賞 | |
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件 名 | 鉄道用超電導ケーブルの製作 |
受賞者 | 超電導応用グループ(6名) |
概 要 | 実路線仕様の鉄道用超電導ケーブルを製作し、世界トップクラスである10kA以上の電流を損失なく通電することに成功した。 |
件 名 | 長大構造物上の鉄道車両の地震被害発生確率算出法 |
受賞者 |
鉄道力学研究部 構造力学 研究室長 曽我部 正道 総務部(出向中) 後藤 恵一 鉄道力学研究部 構造力学 研究員 徳永 宗正 鉄道力学研究部 構造力学 副主任研究員 渡辺 勉 |
概 要 | 数十キロの路線における地震時走行性や対策効果を評価する大規模な数値計算手法を開発し、線区全体の地震対策に資するための重要な手法を開発した。 |
件 名 | 高効率誘導主電動機の開発 |
受賞者 |
車両制御技術研究部 動力システム 主任研究員 近藤 稔 元 車両制御技術研究部 (現:JR西日本) 宮部 実 |
概 要 | 新構造回転子など種々の工夫により消費電力削減効果に優れた主電動機を開発した。 |
2.業務成果賞 | |
件 名 | 九州北部豪雨における被災線区の復旧支援 |
受賞者 | 九州北部豪雨復旧支援グループ(10名) |
概 要 | 平成24年7月に発生した九州北部豪雨における構造物の被災に際して、鉄道総研の総合力を発揮し、早期復旧工法や斜面災害対策の指導を迅速かつ適切に実施することにより、列車の早期運行再開に多大な貢献をした。 |
件 名 | 耐震設計標準の改訂と東北地方太平洋沖地震の検証 |
受賞者 | 耐震設計標準改訂グループ(10名) |
概 要 | 耐震設計標準の改訂にあたり、東北地方太平洋沖地震での検証結果を踏まえつつ、高度な学術性と実用性を両立させた性能照査型の設計標準を構築し、さらに危機耐性という新しい考え方を導入した。 |
3.研究開発成果褒賞 | |
受賞:5件、対象者:23名 | |
4.業務成果褒賞 | |
受賞:4件、対象者:27名 | |
5.研究開発奨励賞 | |
件 名 | 直動形摩耗試験機の開発と通電摩耗形態支配要因の研究 |
受賞者 | 電力技術研究部 集電管理 副主任研究員 山下 主税 |
件 名 | 地下水の移動と拡散を考慮した地盤解析法の構築 |
受賞者 | 構造物技術研究部 トンネル 副主任研究員 仲山 貴司 |
件 名 | 圧電ゴムの粒子配向による性能向上 |
受賞者 | 材料技術研究部 防振材料 副主任研究員 間々田 祥吾 |
件 名 | 車載用電磁結合リアクトルの開発 |
受賞者 | 車両制御技術研究部 駆動制御 研究員 仲村 孝行 |