300m級超電導き電ケーブルの完成
−電車の走行試験開始−

公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、これまで鉄道用超電導ケーブルの研究開発を進め、このたび300m級超電導き電ケーブルが完成し、電車の走行試験を開始します。

直流電気鉄道において、車両に電気を送り届けるき電線は電気抵抗を有するため、鉄道特有の回生失効や送電損失、電圧降下などといった課題があります。そこで、ゼロ抵抗送電が可能となる超電導をき電線へ適用することで、回生失効や送電損失の抑制による省エネルギー化に加え、電圧補償、変電所の負荷平準化や集約化、電食の抑制など様々な効果が期待されます。鉄道総研では、一き電分岐区間に相当する300m級の超電導ケーブルを製作し、鉄道総研内の試験線にて電車を使用した走行試験に着手します。

今回開発した超電導き電ケーブルシステムは、定格DC1500V、電流容量1000Aであり、現状の鉄道路線に敷設できるよう見掛け上1本で冷媒の循環を行う対向流循環方式を採用しています。300m級の鉄道用超電導き電ケーブルを、国立研究所内試験線に敷設し、これまで電車の実走行に向けた各種実験を進めてきました。実用化を意識し、敷設においては線路跨ぎや踏切跨ぎの場所を組み入れ、冷却による熱収縮緩和手法などを取り入れています。この成果により、実路線への導入に向けた知見を得るとともに、現在の直流電気鉄道へ適用可能であることを実証しました。鉄道総研では、今回の試験データを収集し、超電導き電ケーブルの実用化を進めていきます。

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図1.超電導き電ケーブル

本研究は、国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました。