騒音低減システムの開発

制振材や吸音材、あるいは弾性体での振動絶縁などによる騒音対策は、高周波域では比較的簡単に低減しやすいのに対し、低・中周波数帯域騒音は一般的に困難です。鉄道車両の車内騒音対策としては、内装板や床板等の伝搬経路に取り付け可能で、軽量で効果の高い対策法が求められています。

鉄道車両の内装板の振動は走行中に常に変動しているため、既存の騒音制御法をそのまま適用することはできません。そこで、図1のような、圧電材料を貼付した平板(遮音板)を平面状に配列したパネルを内装板に空気層を設けて取り付けることで、内装板の振動状態の影響を受けない新しい騒音低減法を開発しました。このシステムの特徴は次の通りです。

  1. 内装板の振動状態の影響を受けずに騒音低減が可能です。そのため、内装板や対象空間の状態を同定するためのセンサーが要りません。
  2. 制御対象が音響エネルギーなので、制御に必要なエネルギーが小さく済みます。
  3. オペアンプを使用したアナログ回路により簡単に制御することができます。
  4. パネル部分および制御回路は大量生産できるので低コストです。

この騒音低減システムを、図2の通りパンタグラフからの侵入音を対象に天井パネルと天井構体との間に仮設したところ、図3の通り、200Hz近傍のピーク音を低減できることを確認しました。

また、遮音板に張力を加えることで、騒音を低減できる周波数が調整できるようになり、騒音低減効果も大きくできることが分かりました。そのため、図4に示すような、遮音板を取り付けるフレームを外フレームと内フレーム の二重構造とし、張力調整ネジにより遮音板への張力を印加できる張力印加型騒音低減ユニットを考案しました。騒音低減効果を確認したところ、図5に示すとおり、騒音低減ユニットの透過音を最大20dB以上低減しました。

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