車輪踏面の微小凹凸に着目した車輪とレール間の接線力特性解明のための研究

車輪とレール間の接線力特性の適正化による車両の運動特性向上を目的に、車輪踏面の微小凹凸に着目した研究を進めています。

1.概要

車輪とレール間に作用する接線力(クリープ力)特性を正確に把握することは、鉄道車両が安全・安定走行するために必要な事柄です。この接線力は車輪とレールが接触した時にできる弾性変形部分(接触面形状)の接線方向に作用するため、接触面形状を正確に把握することが接線力特性を精度良く推定するために重要となります。

一方で車輪踏面(レールと接する部分)は、車両の走行距離が増加するにともない摩耗して徐々に形状が崩れてきます。このため、定期的に専用の車輪旋盤を使って、車輪踏面を元の設計形状に削正して良好な走行性能を維持しています。しかし、車輪旋盤の性能によっては一定のピッチ(間隔)で高さ数μm程度の削正痕(凹凸)が車輪踏面に残ることがありますが(図1)、このような微小な凹凸が車両の走行性能に与える影響に関して詳細に検討されたことはあまりありませんでした。

そこで当研究室では、いわゆる「粗さ」レベルより明確に大きい車輪踏面の「微小凹凸」の有無が車両の走行性能に与える影響を調査するとともに、この特性を有効活用して車両の運動特性を向上させる研究開発を行っています。

図1 車輪踏面に残った削正痕(微小凹凸)

2.実車輪とレール間の接触面形状の把握

車輪とレール間の接触面形状を、輪軸が左右方向に±3mmの範囲で移動した条件で計算しました(図2)。上側が表面の平滑な設計形状で計算した結果、下側が実車両から測定した形状を用いて計算した結果です。

車輪踏面が平滑な設計形状では、接触面形状はHertz理論からも理解できるように楕円形状となっています。しかし、実際の車輪踏面形状で計算した結果は削正痕の影響で外形寸法は表面の平滑な設計形状の場合とほぼ同じ大きさになっていますが、前後方向に筋が入った形態となっており、レールと接触している部分としていない部分があることがわかりました。また、この計算結果から、実際の車輪とレール間に作用する接線力は理論的に計算される値より小さい可能性があることもわかりました。

図2 輪軸左右位置と車輪・レール間の接触面形状の関係(計算結果)

3.車輪とレール間の接線力特性の把握

鉄道総研の転がり−すべり摩擦力試験機において、直径30mmの試験片を車輪と見なし、接触面の山型形状のピッチと高さを変化させ接線力測定実験を行いました。接線力測定実験の条件は、試験片の接触面形状以外は全て同じとし、環境条件は温度20℃、相対湿度30%の乾燥条件としました(図3)。

その結果、試験片の直径や試験片間のすべり率、押し付け荷重などが同じでも、接触面に山型形状(微小凹凸)がある条件では接触面が平滑な条件より前後方向、左右方向ともに接線力係数(=接線力/荷重)が小さくなることがわかりました。また、微小凹凸の高さとピッチの大きさを変えると接線力係数が変化することも分かりました。

これらの検討により、車輪踏面の微小凹凸を考慮した接線力特性の評価が車輪とレール間の接線力特性を正確に把握するために必要であることがわかりました。

図3 接線力測定実験で使用した車輪側試験片と実験結果(アタック角約0.6度の場合)

4.実物車輪とレール間の接線力特性の把握

車輪踏面に微小凹凸がある場合、車輪とレール間の接線力特性がどのように変化するのかを確認するため、鉄道総研のブレーキ性能試験機・粘着試験ユニットで実物車輪を用いた接線力測定実験を行いました(図4)。

その結果、車輪踏面に微小凹凸を設けると、平滑な条件より接線力が小さくなること、また微小凹凸の高さが同じでもピッチ(凹凸の幅)により接線力特性が変化しました。この結果は小型円筒試験片を用いた実験結果と同様の傾向です。

このような小さな凹凸でも、実物車輪とレール間の接線力特性を変えるだけの力があり、この事は、車輪踏面に適切な形状の微小凹凸を設けると車両の運動特性を向上できる可能性があることを意味しています。

図4 実物車輪を用いた接線力測定実験状況と実験結果

参考文献

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