軽量アクティブマスダンパ(AMD)による多モード制振

新幹線や在来線の特急、通勤形車両などの車種を問わず、複数の車体弾性振動モードが鉄道車両の乗り心地に影響を与えていることがわかってきました。そのような複数の車体弾性振動モードを同時に制振(多モード制振)する手法はこれまで検討例がほとんどありません。そこで車両振動研究室では、アクティブマスダンパ (AMD)を用いた多モード制振法の開発を行っています。

AMDはアクチュエータを用いておもり(振動体)を駆動し、その慣性反力により制振を行うもので、通常のパッシブな動吸振器に比べ、小型・軽量な装置で制振が可能、多モード制振への対応が容易、制振対象周波数を変更できるため様々な車両に適用可能、などの特徴があります。

既存のアクチュエータや数値解析による検討を基に、AMD装置を新規に製作しました(図1)。これを2台用い、実車を対象とした試験を実施して複数の弾性振動モードによる車体振動を同時に低減できることを確認しました(図2、図3)。2台のAMDと制御装置を合わせた質量は150kg程度であり、小型・軽量なシステムで車体の多モード制振を実現できることが示されました(文献2,3参照)。

このAMDによって、車体床下に取付けられている回転機から車内床面に伝わる振動を低減することにも取り組んでいます(文献4参照)。

参考文献

  1. 秋山裕喜、富岡隆弘、瀧上唯夫:車体弾性振動低減のためのアクティブマスダンパの開発、鉄道総研報告、Vol.27、No.5、pp.17-22、2013.5
  2. 秋山裕喜、富岡隆弘、瀧上唯夫:小型アクティブマスダンパによる車体弾性振動の多モード制振効果、鉄道総研報告、Vol.27、No.12、pp.29-34、2013.12
  3. 秋山裕喜、瀧上唯夫、相田健一郎:車体弾性振動低減のためのアクティブマスダンパの性能向上、鉄道総研報告、Vol.33、 No.3、pp.41-46、2019.3
  4. 秋山裕喜、瀧上唯夫、槇田耕伸:アクティブマスダンパを用いた鉄道車体の回転機振動低減手法の提案、鉄道総研報告、Vol.35、 No.8、pp.29-34、2021.8
  5. 秋山裕喜、富岡隆弘、瀧上唯夫、相田健一郎:実走行を模擬して車体制振デバイスの効果を調べる、RRR、Vol.72、 No.11、pp.16-19、2015.11

その他の関連コンテンツ