空転収束の早期検知によるけん引力の向上

空転の収束を早期に検知することにより再粘着制御による電動機トルクの余分な引き下げがなくなり、起動けん引力が向上しました。

電気車では通常、主電動機回転子の回転速度や加速度情報を用いて空転を検知しています。回転速度や加速度が閾値を超過した時に空転と判断(空転検知)し、再粘着させるために主電動機トルクを引き下げます(図1)。その後、回転速度が最大値となり減速を開始した時を空転が収束し始めたと判断(空転収束検知)し、トルクの引き下げを終了します。

図1 空転検知とトルク引き下げ

空転時の余分なトルク引き下げは、けん引力を低下させるので、空転収束を適正に検知することが求められます。回転速度や加速度の情報には、台車や車体の振動によって車輪回転成分以外の振動成分が含まれ、空転誤検知の要因となるので、通常、これらの情報には平滑化処理が施されます。ここで、空転発生直後の加速度は徐々に大きくなり、空転収束時の加速度は急激に小さくなる傾向があるため、両者の変化率には数倍の開きがあります。

そこで、その差に着目し、平滑化処理の時定数の大きなものを空転検知(トルク引き下げ開始)用に、小さいものを空転収束検知(トルク引き下げ停止)用に分けて使用することを提案しました(図2)。これにより、空転収束の検知の遅れによる余分なトルクの引き下げがなくなり、けん引力向上が期待できます。

図2 空転加速度の平滑化処理

提案した空転検知方式の有効性を確認するため、新製入換機関車HD300を用いて散水空転試験を実施しました(図3)。試験の結果、けん引力は0~10km/hの速度域において、平均5%以上向上することを確認しました(図4)。本方法は本線用機関車や電車へも適用できます。

図3 入換機関車HD300の走行試験風景(東京貨物ターミナル)
図4 現車試験結果

※本ページ内で使用している画像は、日本貨物鉄道(株)様の許諾を得て使用しています。

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参考文献

  1. 山下道寛、添田正:空転の収束を早期に検知する再粘着制御方法、リニアドライブ/電気鉄道合同研究会・電気学会、2014.08
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