氷結条件におけるブレーキディスクの摩擦特性

ディスクの摩擦面に厚さ0.5mmの氷結層を形成し、さらにブレーキ開始温度を−20℃として低温・氷結状態を模擬した台上ブレーキ試験です。

近年、営業車両の速度向上が図られ、高いブレーキ性能が要求されています。保安機器であるブレーキの性能はいかなる気象条件下においても、その性能を確保しなければなりません。しかし、鉄道車両の機械ブレーキ装置は摩擦ブレーキを用いており、摺動面に油脂や水などが介在すると摩擦係数が著しく低下して必要なブレーキ力の確保が困難となることから、速度を規制したり、予めブレーキを作用させたりしながら走行することで対処しています。

過去、降雪時のブレーキ性能低下について調べるために、台上試験において低温条件の再現が試行されてきましたが、氷点下を模擬することは出来ませんでした。そこで、本研究では台上試験において氷結条件を実現し(図1)、ブレーキ試験を行いました。氷結条件では、ディスクの摩擦面に厚さ0.5mmの氷結層を形成し、ブレーキ開始温度を−20℃としました。

図1 軸ディスクブレーキ装置

図2に氷結条件におけるチャート例を示します。制動直後から約25secまでの間にトルクが出ていません。これは氷雪の介在によって、ディスクとライニングの間の摩擦係数が極めて低いためです。その後、氷雪の破砕を伴って摩擦面が接触を始め、摩擦熱による温度上昇とともにトルクが回復しますが、ブレーキ距離は常温条件に比べて大幅に延伸してしまいます。

図2 氷結条件時の試験チャート

図3に常温及び氷結条件における瞬間摩擦係数の例を示します。氷雪の介在による摩擦面のすべりはブレーキ初速度及び押付力が小さいほど顕著な傾向を示しています。ブレーキ性能としては、常温条件では摩擦熱のフェード現象によって低下する傾向、氷結条件は氷雪破砕の促進とフェード現象の抑制効果により上昇する傾向がそれぞれ確認されました。なお、摩擦係数の低下率は押付力に依存せず、初速度125km/hが約50%、165km/hが約7%でした(図4)。これは過去に行った低温条件のブレーキ試験結果に比べて著しい性能の低下であり、現車の氷結条件を模擬出来ていると考えられます。

図3 瞬間摩擦係数
図4 瞬時平均摩擦係数

参考文献

  1. 嵯峨信一:氷結条件におけるディスクブレーキの摩擦特性,第14回鉄道技術・政策連合シンポジウム J-Rail 2007,pp.335-336,2007.12
  2. 嵯峨信一:氷雪条件を模擬した台上ブレーキ試験の試行,第15回鉄道技術・政策連合シンポジウム (J-Rail) 2008,pp.109-110,2008.12
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