コンクリート充填鋼管(CFT)部材の照査法と補修法

1.はじめに

コンクリート充填鋼管(CFT)部材は、円形又は矩形断面の鋼管にコンクリートを充填した構造で断面性能に優れ、また工期短縮や狭隘箇所での施工が可能といった施工性にも優れた部材です(図1)。このCFT部材では、設計時の照査法の適用範囲が狭く、構造物への適用が限られるという点および損傷時の補修法が確立されていないという点に課題がありました。そこで、円形断面CFT部材について適用範囲を拡大できる新たな照査法および地震時の補修法を提案しました。
また、平成28年に改訂された「鉄道構造物等設計標準・同解説(鋼とコンクリートの複合構造物)」においては、矩形断面CFT部材の具体的な変形性能算定法が示されておらず、設計が困難といった課題がありました。駅ビル等の柱部材で矩形CFT部材の適用が望まれているニーズを踏まえ、矩形断面CFT部材の照査法を提案しました(図2)。

2.照査法の提案

円形断面CFT部材の曲げ耐力・変形性能の算定法は、「鉄道構造物等設計標準」に定めていますが、その適用範囲が限定されるとの課題がありました。そこで、交番載荷試験(図3)を中心とした耐力・変形性能の算定法の検討を行いました。その結果、CFT部材の適用範囲の拡大が図れ、さらに従来よりも精度向上が図れる算定法を提案しました(図4、5)。本成果は、「鉄道構造物等設計標準・同解説(鋼とコンクリートの複合構造物)」に取り込まれています。
また、矩形断面CFT部材の交番載荷実験を実施し、実験結果に基づいて変形性能算定法を提案しました。これにより、駅ビル等に適用可能な矩形断面CFT部材の設計が可能となりました。

3.地震時の補修法の提案

CFT部材は一般に、地震に強い部材ですが、巨大地震により損傷した場合の補修法に関する検討事例はありませんでした。そこで、補修に関する検討を行い、鋼管の損傷程度に応じた補修方法を提案し、載荷実験により十分な補修効果があることを確認しました(図6)。

参考文献

  1. 上村寿志、斉藤雅充、山下健二:複合構造物に関する改訂標準(案)と現行標準との比較、鉄道総研報告、第28巻、第1号、pp.41-46、2014.01
  2. 斉藤雅充、池田学、萬代能久:高強度材料を用いたコンクリート充填鋼管部材の曲げ耐力と変形性能の評価、鉄道総研報告、第28巻、第1号、pp.29-34、2014.01
  3. 青木千里、池田学、斉藤雅充:せん断スパン比の小さいコンクリート充填鋼管部材の曲げ耐力と変形性能の評価、鉄道総研報告、第28巻、第1号、pp.23-28、2014.01
  4. 斉藤雅充、池田学、萬代能久:円形断面コンクリート充填鋼管部材の最大耐力時における変形性能算定法の検討、複合・合成構造の活用に関するシンポジウム、Vol.10、pp.63-1~63-7、2013
  5. 網谷岳夫,斉藤雅充,池田学,青木千里,井上佳樹:矩形コンクリート充填鋼管部材の曲げ耐力・変形性能の算定法,鉄道総研報告,Vol.30,No.5,pp.53-58,2016.5
  6. 池田学、萬代能久、斉藤雅充、吉田直人:コンクリート充填鋼管部材の補修方法に関する実験的検討、コンクリート工学年次論文集、Vol.35、No.2、pp.1213-1218、2013
  7. 中田 裕喜, 網谷 岳夫, 池田 学, 岡本 大:長方形断面を有するコンクリート充填鋼管柱の部材性能に関する実験的研究、土木学会論文集A1(構造・地震工学)、 Vol. 74、No. 5、II_20-II_31、2018.(※)

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