高速電車線用CPSトロリ線

一般的に,高速電車線用トロリ線には高い引張強度と導電率が求められます。鉄道総研では,現在,新幹線で用いられているクロム-ジルコニウム系析出強化型銅合金トロリ線(以下,PHCトロリ線)と同等の性能を有し,さらに鉄道事業者の小ロット需要に対して柔軟な対応が可能で低コストなトロリ線(CPSトロリ線)を三菱マテリアル株式会社,菱星尼崎電線と共同で開発しました(図1,表1,表2)。CPSトロリ線は素材としてコバルト-りん系析出強化型銅合金を採用することで,硬銅トロリ線やすず入りトロリ線と同じ連続鋳造圧延での製造を可能としています。

定置試験で,熱軟化特性,疲労特性,摩耗特性それぞれを評価した結果,CPSトロリ線はPHCトロリ線と同等以上の性能を有することを確認しました(図2,図3,図4)。熱軟化特性について,CPSトロリは保持温度500℃まではPHCトロリ線と同等であり,実用上は問題ないと判断しました。さらに,CPSトロリ線はPHCトロリ線用金具類をそのまま使用できることを確認しています。

参考文献

  1. 臼木理倫、山下主税、菅原淳、小原拓也、中本斉、池田国夫:小ロット需要に対応可能で低コストな高速電車線用トロリ線の開発、鉄道総研報告、第34巻、第9号、pp.17-22、2020.09