トロリ線とすり板の通電下における摩耗現象の解明

トロリ線とパンタグラフすり板の長寿命化・メンテナンスコスト低減を目指して、通電下において摩耗がどのように進むのかを研究しています。研究の結果、通電下で発生する摩耗形態の種類とその発生条件を解明し、各摩耗形態の発生条件を可視化したマップを提案しました。

1.はじめに

鉄道車両に電力を供給する技術は「集電」と呼ばれ、電車線のトロリ線やパンタグラフのすり板など、しゅう動しながら電気を授受する部材は「集電材料」と呼ばれています。集電材料は主に摩耗によって交換されるため、長寿命化・メンテナンスコスト低減を目指すには、通電下において摩耗がどのように進むのかを知ることが必要です。集電管理研究室では、実験的・解析的アプローチによる通電摩耗現象の解明や、摩耗の制御手法について取り組んでいます。

2.通電下の摩耗形態マップ

鉄道総研が開発した直動型摩耗試験機(図1)によって、接触力や電流によって変化する摩耗形態を詳細に把握することができます。例として、硬銅トロリ線と鉄系焼結合金すり板の組合せでは、図2のように3つの摩耗形態が発生し、摩耗率は各摩耗形態に大きく依存します。

図1 直動型摩耗試験機
図2 100A通電時の摩耗形態とトロリ線摩耗率

通電下において発生する摩耗形態は、トロリ線とすり板の通電接点について、材質や接触表面の被膜抵抗を考慮した温度分布解析(図3)をすることで解明され、図4のようにマップ化することができます。ここで、横軸の接触境界係数αは新たに定義した係数であり、全接触抵抗のうちすり板が占める割合を表します。図4より、摩耗形態は接触電圧だけで決まるものではなく、材料の組合せや接触表面状態によっても変化することがわかりました。

図3 軸対象接点モデルと温度分布解析例
  (硬銅トロリ線—鉄系焼結合金すり板)
図4 摩耗形態マップ(硬銅トロリ線—鉄系焼結合金すり板)

このマップは任意の材料組合せに対して容易に作成することができるため、集電材料の組合せに対する摩耗形態の予測が可能になり、今後の材料開発に活用できます。

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参考文献

  1. 山下主税、足立幸志:硬銅トロリ線と鉄系焼結合金すり板の通電摩耗特性に及ぼす見掛けの接触面積の影響、トライボロジスト、Vol.60、No.6、pp.399-406、2015
  2. 山下主税、足立幸志:介在物を考慮した温度分布解析による集電系材料の通電摩耗機構の解明、トライボロジスト、Vol.59、No.5、pp.302-309、2014
  3. 山下主税、足立幸志:集電材料の摩耗形態および遷移条件に及ぼす通電電流の影響、トライボロジスト、Vol.58、No.7、pp.496-509、2013
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