重腐食環境用ハンガイヤーの開発

金属成分中のNi量を多く調整することで耐食性を向上できないか、トロリ線を支持する金具であるハンガイヤーを対象として試作・試験を通じ検討しました。

架線金具には「アルミニウム青銅」という銅合金が多く用いられています。これは、銅 (Cu)に主な合金成分としてアルミニウム (Al)、鉄 (Fe)、ニッケル (Ni)、マンガン (Mn)を加えたもので、強度と耐食性に優れています。しかし、非常に厳しい腐食環境(重腐食環境)では「脱アルミニウム腐食」という形態の腐食を生じ、強度が著しく低下することがあります。

JIS H 5120「銅及び銅合金鋳物」におけるアルミニウム青銅の成分を表1に示します。規格では成分にある程度の幅を許容していますが、脱アルミニウム腐食を生じた架線金具を調査したところ、成分が規格の範囲内でもNi量が下限に近い場合に腐食を生じやすいことがわかりました。そこで、逆に成分中のNi量を多く調整することで耐食性を向上できないか、トロリ線を支持する金具であるハンガイヤーを対象として試作・試験を通じ検討しました。

表1 JIS H 5120「銅及び銅合金鋳物」におけるアルミニウム青銅の成分(抜粋)

耐食性試作品では、JIS H 5120「銅及び銅合金鋳物」におけるアルミニウム青銅の中でもNi量が多いCAC703をベースにNi量を規格値の上限近くまで増し、その分Al量を減じました。そのため、Al量はCAC703の下限値をやや下回っています。また、比較品として、現在架線金具に用いられているCAC702のNi量とAl量を規格の概ね中間に調整したものも製作しました。試作品のCu、Al、Ni量を分析した結果を表2に示します。

表2 試作ハンガイヤーのCu、Al、Ni量分析結果

強度など基本的特性が問題ないことを所内試験で確認した後、①人工島へ渡る橋の上、②海岸沿いの温泉地帯、の2地点で試作品を現地試験に供しました。①の橋は、道路が上層階、鉄道が下層階で、降雨による塩分除去効果(雨洗効果)がない極めて厳しい腐食環境です。また、温泉地帯では温泉に含まれる成分(硫黄など)が腐食に影響を及ぼすことがあります。

地点①は9ヶ月間、②は6ヶ月間の試験の後に撤去したハンガイヤーの外観を図1に示します。地点①では、比較品は全面が青緑色に腐食しているのに対し、耐食性試作品は金属光沢と青緑色の腐食が混在する状態で、明らかな差が認められました。地点②ではどちらも全体的に黒褐色に腐食しているものの、耐食性試作品は腐食の色が薄く、部分的に金属光沢が残っており、やはり明らかな差が認められました。

図1 現地試験後撤去したハンガイヤーの外観

図1のハンガイヤーの断面を作成し、表面の腐食状態を顕微鏡で観察した結果を図2に示します。地点①②いずれでも、耐食性試作品は腐食層が部分的で薄いことが認められました。

図2 現地試験後撤去したハンガイヤーの表面腐食状況
(断面の顕微鏡観察)

以上のとおり、アルミニウム青銅のNi量を調整することで耐食性が向上することが確認できました。この成果を適用することで、重腐食環境におけるアルミニウム青銅製架線金具の信頼性向上と寿命延伸が期待できます。

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