耐摩耗トングレールの開発

1.はじめに

新幹線・在来線を問わず、分岐線側の通過車両が多いポイント部ではトングレールの摩耗が著しく、交換周期が非常に短くなっています。 そこで、レールの熱処理条件および断面形状を変更することで耐摩耗特性に優れたトングレールを開発しました。開発品は、現地試験によりトングレールの交換周期を従来の1.5~2倍程度延伸できることを確認しました。 本トングレールの使用により、交換周期の延伸によるメンテナンスコストの縮減を図ることができます。なお、本技術は、70S、80Sおよび50kgNレールを使用したトングレールに適用できます。

2.新熱処理条件

トングレール先端部の車輪接触条件の厳しい領域において、ゲージコーナー面の表層部は耐摩耗性を向上するために硬さを高め、 内部については靱性を確保するという熱処理特性を考慮して、レール素材を現用のHC材からHH340素材に変更しました。 また、炉内温度、送り速度および冷却速度などを調整した新熱処理条件により、頭部表層の硬さを必要な範囲で増加させるとともに、 加熱領域の境界部(熱影響部)の位置をレール断面形状が複雑に変化する領域を避け、上首部よりやや下側の腹部位置になるように調整しました。

3.改良断面形状

トングレール摩耗の抑制には初期段階の塑性変形の抑制および車輪フランジとの接触面の圧力低下が有効であり、 ゲージコーナー側の先端形状にフランジ角度と同じ65°の角度を持たせました。

参考文献

  1. 吉田眞、及川祐也、篠原利昭、大塲久良、兼松義一、佐藤幸雄:材質の変更と新熱処理条件等による耐摩耗トングレールの開発、鉄道総研報告、第23巻、第10号、pp.41-46、2009.10