テルミット溶接部の凝固割れ発生防止策の検討

1.はじめに

テルミット溶接法は酸化鉄とアルミニウムの酸化還元反応によって生成された溶鋼(溶けた鉄)をレール継目に流し込む溶接法です。この溶接法は使用する機器が軽く、さらに溶接時間が比較的短いことから、現在、主に軌道上での溶接(3次溶接)で使用されています。

このテルミット溶接部に発生する凝固割れという溶接欠陥は、過去20年以上にわたって発生が報告されていますが、その詳細なメカニズムについては明らかになっていません。本研究では凝固割れの再現を試みる試験を実施し、凝固割れからの折損防止策を検討しました。

2.凝固割れの再現試験

テルミット溶接部の凝固割れ発生条件を解明するため、溶接金属の凝固中に強制的にレールを移動させることにより、凝固割れを再現する試験を実施しました。図1に試験状況を示すように、溶接箇所に設置したモールド内に溶鋼が注入された後、予め設定したタイミング(溶鋼注入からの経過時間として定義)で一方のレールを外側に強制的に移動させることで凝固割れの再現を試みました。

図2に再現試験で発生させた凝固割れの破断面の一例を、施工現場での発生品と併せて示します。現場発生品に類似した下首部の内部に発生した凝固割れは、溶鋼注入後100秒のタイミングでレールを0.35mm移動させた場合に生じたものです。また、再現試験結果から、モールドへの溶鋼注入後90~160秒の間にレールが移動することが、テルミット溶接部の凝固割れ発生条件であることが判明しました。

3.提案する凝固割れからの折損防止策

凝固割れからの折損防止策を、以下に提案します。

  • わずかなレール移動でも凝固割れが発生する可能性があるため、溶鋼注入後90~160秒以内は作業を中断し、溶接部を確実に静置する。
  • レールに軸力が作用する箇所の施工では、必ずレール緊張器を使用し、緊張力を適宜確認する。
  • 下首部を狙った頭頂面からの一探触子法および首振り走査による底部二探触子法を適用し、2~4級のきずエコーを不良と判定する。

参考文献

  1. 寺下善弘、伊藤太初:テルミット溶接部の信頼性向上を目指して、RRR、Vol.70、No.5、pp.8-11、2013.05
  2. 伊藤太初、寺下善弘、辰己光正、山本隆一、設楽英樹:テルミット溶接部における凝固割れの発生条件と折損防止策、鉄道総研報告、第23巻、第10号、pp.59-64、2009.10