規制用風速計の適性配置に資する風観測値の代表性の評価

鉄道沿線の強風監視に用いる規制用風速計の適正配置に資することを目的として、1点の風速計で観測される風速値がもつ空間的な代表性を評価した例を紹介します。

1.はじめに

強風下を走行する鉄道車両の安全を確保するために、強風時の運転規制区間(以下、規制区間と記します)が設定され、規制区間内に設置された規制用風速計で観測される風速値(瞬間風速)に基づいて列車の運転を抑止する、あるいは走行速度を制限するといった運転規制が行われています。通常、規制用風速計は当該の規制区間を代表する強風箇所に設置され、「規制区間内で生じる最も強い風は規制用風速計で観測されている」ことが運転規制による強風時の列車の安全確保の根拠となっています。しかしながら、強風をもたらす気象擾乱の種別や、地形や市街地化などの条件の違い等によって必ずしも規制区間内で一様に強風が吹くとは限らないため、規制区間を代表する強風箇所を客観的に抽出するのは容易ではありません。現在、規制用風速計の適正配置の資することを目的として、1点の風速計で観測される風速値がもつ空間的な代表性の評価に取り組んでいます。

2.風観測値の空間代表性の評価例

平坦な地形条件を有し、かつ市街地化の程度が低い(地表面粗度区分Ⅰ~Ⅱ)10kmの直線区間を対象に、8基の風速計を用いて実施した現地風観測(図1)の結果から、1点の風速計で観測される風速値がもつ空間的な代表性を評価した例を紹介します。

今回の現地風観測では、日最大瞬間風速が20m/s以上となった事例を強風事例と判定し、海風(海から陸地に向かって吹く風、地表面粗度区分Ⅰ)で24例、陸風(陸地から海に向かって吹く風、地表面粗度区分Ⅱ)で41例の強風事例を取得しました。先に述べた通り、鉄道の強風時運転規制は瞬間風速に基づいて行われていることをふまえ、2地点の同時刻のn分間(n=1~60)の最大瞬間風速どうしの相関関係を調べました(図2)。その結果、海風、陸風のいずれの強風でも風速の評価時間nを長くとるほど相関係数が大きくなる傾向にあること、海風の方が陸風よりも相関係数が大きい傾向にあることが分かりました。また、一般的に、2地点間の距離が長くなるほど風速の相関は低くなるといわれていますが、今回の結果では、2地点間距離が10kmの場合でも1分間最大瞬間風速の相関係数は0.92(海風)、0.83(陸風)と強い正の相関があり、1基の風速計で観測される風速値が10km程度の空間を代表できているといえます。

3.本成果の活用法

今回の風観測で得た成果より、平坦な地形条件と市街地化の程度が低い環境下にある規制区間に限定すれば、風速計を10kmに1箇所程度配置することで規制区間全体の強風監視が可能であると推定されます。一方で、地形の起伏があり、また市街地化の程度が高いなど、より複雑な環境下にある規制区間が多く存在します。現在、地形条件と市街地化条件をパラメータとして風速値の空間的な代表性の評価を進めています。ここで得る知見を基に、より多くの規制区間での風速計の最適配置の検討に適用できる知見を創出したいと考えています。

図1 現地風観測の概要
図2 2地点間の距離と同時刻の最大瞬間風速の相関
(風速の評価時間n=1分、5分、10分の例)
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