モーダルシフトを考慮した環境負荷の低減効果の推定

1.はじめに

鉄道は自動車や航空と比べて、単位輸送量当たりのエネルギー消費量や二酸化炭素などの排出量が少ない交通機関です。地球温暖化対策のため、都市間を結ぶ旅客・貨物輸送では、より環境にやさしい鉄道輸送への転換(モーダルシフト)が望ましいと言えます。鉄道施設の新設や改良に伴う環境負荷を定量的に評価する手法として、ライフサイクルアセスメント(LCA)の適用が進んでいますが、その精度向上を目指して、影響の大きいモーダルシフト効果について、より精緻な推計を行うことに取り組んでいます。

2.東北新幹線の延伸開業(八戸~新青森)に伴う二酸化炭素排出量の削減効果の試算

東北新幹線の延伸開業(八戸~新青森)により、誘発されるモーダルシフトに伴う二酸化炭素排出量の削減効果を試算しました。

  • モーダルシフト量の試算には、運輸政策審議会の需要予測で用いられた交通機関分担モデルを適用しました。
  • 都道府県間の幹線旅客流動データによれば、隣県間相互の移動では自動車の分担率が極めて高い傾向にあります。よって、隣県間移動におけるシフト量の試算では、一定の自動車利用固定層を考慮する(図1)など、自動車からのシフト量が過大な推計にならぬような配慮をしました。
  • 試算した自動車、航空、幹線バスから新幹線輸送へのシフト量は、図2に示すとおりとなりました。
  • この結果、年間5万トン以上の二酸化炭素排出量が削減されるとの試算結果が得られました。

図1 非集計ロジットモデルにおける自動車利用固定層挿入の概念
図2 新幹線輸送へのシフト量の県別分布

3.貨物駅の改良に伴う二酸化炭素排出量の削減効果の試算

貨物駅の改良により誘発されるモーダルシフトに伴う二酸化炭素排出量の削減効果を試算しました。

  • 貨物駅では、駅発着線で直接荷役できるような、より効率的で作業時間の短縮が可能となる荷役方式への施設改良(図3)が進められています。
  • この駅改良を施した場合に、貨物のドアツードア輸送時間の短縮による自動車輸送から鉄道輸送へとモーダルシフトする可能性を検討するため、輸送犠牲量(一般化費用)の概念を利用して輸送機関分担モデル(図4)を開発しました。〔輸送犠牲量(S)=運賃料金等の輸送費用(C)+貨物の時間価値(ω)×所要時間(T)〕
  • ある貨物駅での改良をケーススタディに検討を行ったところ、年間約1.5万トンの二酸化炭素排出量が削減されるとの試算結果が得られました。

図3 貨物駅での荷役作業の効率化
図4 輸送犠牲量の概念を利用した機関分担モデル

4.今後の取組み

このような特定の鉄道線区や施設を対象とした環境負荷低減効果の試算例を増やしていくことにより、今後とも鉄道のLCAに関する議論の活性化を促していきたいと考えています。

参考文献

  1. 武藤雅威、相原直樹、辻村太郎 :新幹線延伸開業による環境負荷の低減効果、鉄道総研報告、第21巻、第4号、pp.49-52、2007.04
  2. 厲国権、武藤雅威、田村一軌、相原直樹、辻村太郎:貨物駅の改良によるモーダルシフト効果に伴う環境負荷の低減、鉄道総研報告、第21巻、第4号、pp.53-56、2007.04
  3. 厲国権、武​藤​雅​威、田​村​一​軌、柴​田​宗​典:旧鉄道施設の改良によるインターモーダル貨物輸送の環境効果に関する一考察、鉄道力学論文集、No.10、pp.10-15、2006
  4. 武藤雅威、相原直樹、辻村太郎:新幹線延伸開業に伴うモーダルシフトを考慮した二酸化炭素排出削減量の試算、鉄道力学論文集、No.10、pp.1-6、2006
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