貨物輸送評価手法の開発

1.はじめに

本研究では、地球温暖化や少子高齢化などの社会問題への対応、貨物輸送効率向上の実現に向けて貨物輸送に関する改善対応策を提案するために、荷主などの特有な物流専門知見を用いて複数の評価基準要素および指標項目を体系化した定量評価モデルと既存貨物輸送データを利活用した鉄道貨物版の地理情報システムの構築により貨物交通の評価システムを開発しました。

2.荷主などの特有な物流知見に基づいた貨物輸送の定量評価モデル

荷主は、自社商品(貨物)輸送を行う際に、経済的効果、社会的効果、物流効率性、利便性、輸送サービスの優位性などの複数の側面に基づいて、様々な輸送手段や輸送計画案などの対比・評価により、輸送案を決定します。また。貨物輸送案を表す指標項目には、輸送費用、輸送時間や輸送体系の分かり易さなどの定量的かつ定性的なものが含まれます。このような貨物輸送における荷主の意思決定プロセスに対して、輸送案を総合的に評価することを最終目標として、評価基準要素および指標項目を設定し、図1に示すような階層的な評価構造を体系化しました。

また、この評価体系においては、基準要素間また指標項目間の相対重要性が異なるため、荷主の物流担当者・経験者を調査対象としてWEBアンケート調査を実施し、荷主関係者の経験や勘を活かした判断意識データを取得します。調査で取得したデータを用いて、AHP計算原理に基づいて、各評価基準要素ならびに指標項目の評価重みを算出したことにより、輸送案の定量評価モデルを構築できました。

利用者や事業者が、これを使用して、鉄道貨物輸送とトラック輸送などとの対比・評価を行い、鉄道貨物輸送の課題を明らかにするとともに、輸送効率を向上させる改善対策案を策定することができます。

図1 評価モデルの基本構造

3.輸送実態評価用の鉄道貨物版の地理情報システム(RF-GIS)

貨物輸送は、普段社会の目に触れる機会が少ないため、輸送実態が分かりにくく、適切に評価することが困難です。また、鉄道貨物輸送は、旅客鉄道路線などのインフラのもとで貨物列車を運行するため、現状の貨物列車を効率的に活用することが必要となります。本研究では、鉄道貨物輸送の現状に対して、既存情報データを利用・活用して、貨物ベースの情報データを、列車ベースの情報データに整合させ、列車の輸送実態を地図上の鉄道路線で表示する鉄道貨物版の地理情報システム(Rail Freight Geographic Information System: RF-GIS)を開発しました(図2)。

RF-GISでは、貨物列車の運転計画や荷積みの輸送計画などを入力とし、貨物列車が始発駅から終着駅までの走行経路および各通過線区における積載状況、或いはコンテナの占有状況を視覚的に把握し、評価することを行い、利用者・事業者に対して輸送効率化・サービス水準の向上などの輸送改善対策案の策定における意思決定の有益な支援情報を提供します。

図2 鉄道貨物版の地理情報システム
(Rail Freight Geographic Information System: RF-GIS)

4.応用ケース分析

以上の貨物交通の評価モデルと輸送実態評価用の鉄道版GISに基づいた鉄道コンテナ輸送とトラック直接輸送との対比・評価を行うことにより、現状のコンテナ輸送における課題を明らかにすることができました。また、それらの課題に応じて複数要素を考慮した輸送改善対策案を適用したケーススタディを実施し、潜在貨物需要を顕在化する可能な効果を定量的に推測できます(図3)。

図3 ケース分析

参考文献

  1. 厲国権:貨物輸送実態を評価するためのGISシステムの構築、第39回土木情報学シンポジウム講演論文集、土木学会、2014.09
  2. 厲国権、その他:貨物交通の評価における階層的な構造体系と意識調査に関する一考察、日本ロジスティクスシステム学会第17回全国大会講演論文集、2014.05
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