コンパクトシティと地域公共交通

1.はじめに

最近、地方創生や地域活性化が大きな話題になっています。地域の移動手段としての公共交通の活性化や再生は、そのために必要不可欠であることから、本調査では、地域鉄道の特徴や役割そして直面している課題を踏まえ、既存のインフラと技術の利活用や観光交通の視点から、鉄軌道と道路の両方で走行できるバス車両の運行による鉄軌道型RBT(Rail Bus Transit)構想と、それを適用したコンパクトシティ構築の考え方について考察します。

2.コンパクトシティの概念に基づいた既存インフラの利活用

コンパクトシティという都市開発の戦略は、一般的には都市膨張への対抗手段としての考え方が多いようですが、近年では、地球規模の気候変動対策、都市の持続可能な開発政策、そして地域活性化の施策などとして議論されてきています。

コンパクトシティの基本は、土地利用計画制度と税制・金融などの誘導策によって、地域都市の中心部や既存集落への集住を促進し、地域の核となる鉄道駅やターミナルの周辺エリアに都市機能(総合病院、訪問看護・介護施設、商業施設等)を集約することです。即ち、都市再生や地域活性化は、既存の社会交通インフラ施設などを利活用するとともに、公共交通指向のコンパクトなまちづくりを進めることに近づくものと思われます。コンパクトシティを推進する仕組みにおいては、次の3つの側面を考えなければなりません。

  1. 都市機能の集約化や、公共交通指向の開発、都市計画と連動する公共交通ネットワークの確保などを一体化させる施設の改良整備
  2. 交通整備及び事業施策・産業観光施策やまちづくり施策・教育文化施策・福祉厚生施策を含む社会基盤としての施策間連携
  3. 国・地方自治体・関連事業者・施設管理経営者・住民・団体などの主体間の協働

従って、公共交通の維持・確保に取り組む体制の進め方が制度上に整備されたことから、既存のインフラを利活用することにより、地域の実情に合わせた多様な公共交通サービスが提供されていくものと期待されています。

3.既存インフラと技術の利活用による軌道・道路両用輸送システム (Rail Bus Transit:RBT) の構想

(1)公共交通向け技術の進展

これまでは、ガイドウェイバスをはじめ、廃止区間の軌道にバス車両を走行させるために生まれました。これは、一つの車両で、従来のバス運転となる道路区間も走行できるデュアルモード車両(図1)です。また道路とレールを自在に走行可能なDMV (Dual Mode Vehicle :JR北海道)が開発中であるなど、既存の鉄軌道インフラを利活用する公共交通向けの技術が進展しています。

(2)既存インフラと技術の利活用による軌道・道路両用輸送システム (Rail Bus Transit:RBT)

ガイドウェイバスは、舗装面をゴムタイヤで走行することから、レールが不要です。一方、DMVは、マイクロバス程度の乗客定員に限られてしまいますので、観光交通への転用が難しいかもしれません。そこで私どもは、走行路の固定基幹部材や軌道回路としてのレール機能をそのまま用い、レールには負担をかけず劣化もさせないような鉄軌道の改良を行うことにより、図2に示すような既存のインフラを利活用した鉄軌道・道路両用運送システムRBT(Rail-Bus-Transit)構想を提案しました。その基本構成を、以下に示します。

  1. 既存固有施設(路盤、軌道、軌道回路、信号システムなど)の利活用
  2. 軌道の枕木のPC化と軌条レールの改良
  3. ゴムダイヤの走行路面が軌道の両肩への舗装
  4. 側面ガイド軌条の設置による専用走行路の整備
  5. バス技術をベースにした車両の最前部に取り付けた側面ガイド輪による車両のガイド
  6. 同車両の下部に接触シューを付けて既存線路における軌道回路を使用した車両検知
  7. ゴムダイヤ式車両の導入により専用走行路と一般道で自由に走行可能
  8. 専用走行区間において、鉄輪式車両が走行可能
  9. ガイドウェイバス車両技術の活用

図1 専用走行路上のデュアルモードバス車両
図2 軌道・道路両用輸送システム
(Rail-Bus-Transit:RBT)の基本構成

4.RBTを含むコンパクトシティの提案

地域都市における公共交通輸送を効率的に行うために、地域交通の需要ニーズに合わせた輸送体系の構築が必要となります。図2に示したRBT構想は、既存の鉄道駅をベースにして、車両を集合・離散する機能を整備します(図3)。集合・離散駅相互間では、RBT専用走行路上を複数の車両が続行運転もしくは連結運転し、集合・離散駅と始発駅/終着駅間は、市街地の一般道上を各車両が個別に分散して走行します。

このようなRBTを含むコンパクトシティでは、既存インフラ施設と交通技術を最大限に利活用しながら、施設の改良・整備コストが新設と比べて安いという特徴を合わせ持っています。この輸送システムの導入は、地域活性化や地方創生に向けたコンパクトシティの構築(図4)を支援するための一つのアイテムになることを目指しています。

地域公共交通では、住宅・福祉厚生施設(病院・看護介護施設)・商業施設・学校・業務関連施設等を結節する交通マネジメントが重要です。RBTはその役割を担うことが可能であり、コンパクトシティにおける公共交通機能や都市機能を向上させる力を秘めていると考えられます。

図3 専用道での集合走行と市街道での分散走行
図4 軌道型RBT(Rail-Bus-Transit)に基づく地域まちづくりと一体化したコンパクトシティの構想図

5.まとめ

本調査では、地域鉄道を中心に、鉄道経営の実態分析から、関係する交通施策の変遷、公共交通事業のあり方そして交通及び鉄道技術の開発動向まで幅広く行い、議論を行ってきました。今後もさらに議論を深めていきたいと考えています。

参考文献

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