センシング/通信技術を活用した設備状態監視システムの研究

鉄道の各設備・構造物に設置されたセンサ群からの計測データを集約し、拠点まで伝送する無線通信技術及びデータを蓄積するデータベースの研究開発を実施しています。

1.はじめに

鉄道の沿線設備、軌道、構造物、車両などの状態監視を行うため、無線センサネットワークを導入して、そのデータに基づく設備の監視、さらには取替や補修などの保全・補修計画を策定する取り組みへの関心が高まっています。無線センサネットワークとは、センサを観測箇所に設置して、対象の観測データを無線で送信するネットワークシステムのことです。無線センサネットワークを用いることにより、鉄道設備の状態を監視することが可能となります。ここではセンサネットワークを実構造物に対して設置し、それらのデータを収集して蓄積する取組みを紹介します。また、センサネットワークの導入から運用にかかる費用を適切にみつもるとともに、それらのコストを最小化するための研究を実施しています。

2.センサデータ収集システムの開発

鉄道は線路方向に長い設備も多く、常時のメンテナンスや目視による点検や立入が難しく、沿線には簡易に電源を取得するための設備が限られるといった特徴があります。無線で利用する周波数帯域によっては、時間によって電波の状況に変動があり、車両通過の影響も存在するなどの、鉄道沿線ならではの固有の状況が存在します。

こうした現場においては、データ収集を実施するために現地の状況にあわせ適切なデータ収集の手法を選択することが重要です。

本研究では、ハンディターミナルによる収集、走行列車による沿線センサデータの回収、構造物単位での無線ネットワークの局所設置、測定拠点と監視拠点を結ぶ広域伝送を行う公衆回線(携帯電話等)による収集、等を実施しています(図1)。特に現用橋梁の健全度を把握するための無線センサネットワークの開発と運用を実施し、そこで得られた知見を獲得してまとめました。(図2)

図1 さまざまなセンサデータ収集系の開発
図2 現用橋梁のモニタリングシステムの適用フロー

3.データ管理管理システム

鉄道の各設備・構造物等に設置されたセンサ群から計測データを収集し、 共通データベース上でのデータの一元管理、 地理情報システム(GIS)上でのデータ 表示および事前に設定したしきい値等による異常判定を行なうシステムを開発しました (図3)。

センサデータを蓄積するうえでは、センサから取得したデータ本体と、測定項目、利用しているセンサ諸元、対象設備情報等との紐付けを適切に行う仕組みが求められます。長期にわたるデータ管理においては、センサの取り換え、測定項目の変更、センサ設置位置の変化など様々な事象が発生します。このような状況を吸収しつつ、データ管理を実施するために、XMLによるメタデータを設計し、長期的かつ実用的なデータ管理の仕組みを構築しました。(図4)

図3 センサデータ表示・管理システム
図4 メタデータを用いたセンサデータの管理

4.無線センサネットワークの設計支援手法

無線センサネットワークを設置する上では、設置段階、運用段階のいずれにおいても相応のコストが発生します。そこで、設置費用(センサ、中継機、データ集約装置の設置費用)と運用費用(電池購入費用、電池交換作業費用)の総和が最小となるように、中継機の設置数とそれらの設置場所、センサと中継機のデータ送信出力レベル、センサデータの伝送経路を同時に設計するための数理モデルを、効率よく解くアルゴリズムを開発しました。図5にネットワークの設計出力例としてトンネルでの事例を示します。

また運用段階において取得可能な電池の消費、故障率などデータに基づいて、ネットワークの修正設計を行う機能も備えています。(図6)

図5 運用コストを最小化できる無線センサネットワークの設計出力例
図6 無線ネットワークの設計概要

5.今後の計画

これまでに得られた知見に基づき鉄道現場への無線センサネットワークの導入支援を行います。

参考文献

  1. 岩澤永照、羽田明生、川崎邦弘、野末道子、阿部慶太:無線センサネットワークによる鉄道構造物の状態監視、第21回鉄道技術・政策連合シンポジウム、2014
  2. Hada,A., Soga, K., Liu, R, Wassell, I.J.:“Lagrangian heuristic method for the wireless sensor network design problem in railway structural health monitoring”, Mechanical Systems and Signal Processing 28, pp.20-35, 2012
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