無線式列車制御用通信ネットワークシミュレータ

本シミュレーションでは、鉄道沿線の電波伝搬環境や雑音を考慮しながら無線によるデータ伝送品質を計算し、列車制御の安定性を評価します。

1.概要

無線式列車制御システムでは、列車の速度や位置といった列車の安全に直結する情報を無線で伝送します。このため、無線によるデータ伝送回線を含む通信ネットワークの性能が列車制御システムの安全性や信頼性に直結することになります。従って、誤り率や遅延時間などの性能が、列車制御システムが必要とする範囲内で確保できるよう、無線データ伝送回線と通信ネットワークを適切に設計することが不可欠です(図1)。

しかし、鉄道環境を考慮しながら適切な無線データ伝送回線や通信ネットワークを設計するためには多くの時間とコスト、経験等が必要となり、また、現地試験では様々な制約があるため、余裕をもたせるために高スペックの無線システムやネットワーク構成となってしまう可能性があります。

そこで、鉄道総研では、無線式列車制御用通信ネットワークの設計作業や、構築された通信ネットワークの性能評価を支援することを目的として、無線通信システムを含む通信ネットワークの伝送性能をシミュレーションによって予測し、伝送品質の変化によって列車が非常停止する確率を評価するシステムを開発しました。

図1 無線式列車制御システムの構成例

2.特徴

  • 本シミュレータでは、「無線データ伝送回線シミュレータ(RADTRACE)」と「無線式列車制御用ネットワークシミュレータ(TCNET)」の2つのシミュレータを連携させることにより、鉄道環境での無線データ伝送品質を考慮した通信ネットワーク全体の性能を計算します(図2)。
  • 「無線データ伝送回線シミュレータ(RADTRACE)」は、線区の線形、基地局の位置、無線機の性能、雑音源や干渉源等を設定することにより、鉄道沿線における電波伝搬環境や列車から発生するノイズ環境、他基地局からの干渉妨害などを考慮しながら、複数の基地局と列車との間の無線伝送品質(ビットエラー率、フレームロス率、伝送遅延時間など)を計算します。
  • 「無線式列車制御用ネットワークシミュレータ(TCNET)」は、ネットワークの構成と適用するプロトコル(伝送手順やデータフォーマットなどの通信規約)、列車の走行パターン等を設定することにより、無線データ伝送回線シミュレータ(RADTRACE)と連携しながら、複数の地上装置と車上装置との間で行われるデータの伝送過程をシミュレーションします。これにより、データ損失率やラウンドトリップタイムなど、通信ネットワークの安定性・信頼性の評価に必要な項目を計算します。TCNETでは、鉄道における保安伝送に関する国際規格(IEC 62280-2)が想定しているスレット(脅威)の一部を模擬的に発生させ、列車制御への影響を評価することができます。
  • 最終的には、TCNETのシミュレーション結果から、無線通信ネットワークにおける伝送品質の劣化や妨害等によって列車が緊急停止する確率を計算し、出力します(図3)。
  • なお、パラメータチューニングによって、実在の無線通信ネットワークの特性(電文の誤り率や伝送遅延など)を再現できることを確認しています。

図2 開発した2つのシミュレータの構成と連携
図3 シミュレータの画面例(IPネットワークの場合)と実行結果の一例

3.主な用途

  • 無線式列車制御システムを導入する際の無線通信ネットワークの設計支援
    • 基地局の配置、無線機の仕様、アンテナの性能...
    • ネットワーク構成、プロトコル、ネットワーク機器の性能...
  • 「導入済の無線通信ネットワークの性能評価の支援
    • 沿線環境の変化、妨害発生時や故障時の影響の予測

4.シミュレータの使用形態

  • 鉄道総研がシミュレーション条件等の提示を受けて、シミュレーションを実行し、評価結果を提供
  • 「ユーザーの要望に合わせてシミュレータをカスタマイズし、実行ファイルを提供
    (ベースとなるシミュレーション実行環境をご準備頂く必要があります)
  • RADTRACEについては、コアとなる計算機能をプログラムライブラリとしてパッケージ化して提供することも可能

参考文献

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