旅客流動を考慮した対話型ダイヤ作成システム

1.はじめに

現状では、ダイヤ変更後の全列車について、瞬時に全駅間の乗車人員を推定することは困難です。そこで、本研究では、ダイヤ改正で計画する列車ダイヤのデータと過去の実績ODデータ(出発駅と到着駅の組み合わせごとに利用者の人数を集計したデータ)をもとに、従来から研究されている旅客流動推定の手法を応用することで、改正後のダイヤの各列車個別の乗車人員をインタラクティブ(対話的)に推定するシステムを開発しています。

2.システムの特徴

旅客流動を考慮した対話的ダイヤ作成システムは①高速に乗車率を推定することができる、②直感的に列車ダイヤを操作することができる、という2点の特徴をもっています。

高速化に関しては、従来の旅客の列車乗継経路推定アルゴリズムで行っていた重複する計算を削除し、高速に乗車率を推定するアルゴリズムを新たに考案しました(図1)。

また、ユーザが直感的にシステムを操作できるように、システムにおける処理の流れとユーザがダイヤを作成するまでの実際の業務の流れが合致するような設計をしています(図2)。その上で、様々なタイプのダイヤを修正しながら迅速かつ容易に乗車率を推定したい、各列車の乗車率の推定結果を色分けし視覚的・直感的に把握したい等というニーズに応えられるように様々な機能を組み込んでいます。大都市圏内のある路線に対して終日ダイヤの乗車率推定を行った場合、10秒程度で乗車率推定が可能になっています。

※動画では、下記の環境で乗車率推定を行ったデモンストレーションを行っています。

 OS:Windows 7 professional (32bit)
 プロセッサ:Intel® Core™ i7-4790 CPU @ 3.60GHz 3.60GHz
 実装メモリ:4.00GB

3.活用事例

このシステムを用いて、ダイヤ作成担当者の意思決定支援に活用することができます。例えば、列車ダイヤにおける優等列車と普通列車の比率の変更や、列車の本数の変更(増便、減便)を実施した場合の乗車率をすぐ確認することができます。そのため、多くの改正ダイヤ案の中から乗車率のバラつきの少ないダイヤを絞り込むことができます。

動画 乗車率を推定しながらダイヤ修正

※上記の動画は外部の動画サイトの埋め込みリンクです。

関連ページ

参考文献

  1. 國松武俊、平井力、富井規雄:マイクロシミュレーションを用いた利用者の視点による列車ダイヤ評価方法、電気学会論文誌D(産業応用部門)、Vol.130、No.4、pp.459-467、2010.04(※)
  2. 辰井大祐、國松武俊、石原裕介、坂口隆:高速な乗車率推定機能を組み込んだ対話的ダイヤ作成システムの開発、鉄道総研報告、第27巻、第9号、pp.29-34、2013.09

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