乗務員運用計画自動作成アルゴリズム

1.概要

運転士と車掌の運用を定める計画を、乗務員運用計画と呼びます。乗務員運用計画は、乗務員が担当する列車の順序、乗務する区間、乗務開始、終了駅での作業内容などを表す「行路」の構成を決める「行路作成」と、乗務員が勤務する行路の順序と休養日の位置を表す「交番」の構成を決める「交番作成」によって行われます。行路作成では、乗務員運用の効率性について検討し、要員効率の良い行路の構成(行路計画)を作成するアルゴリズムを開発しました。交番作成では、乗務員交番表をコンピュータで自動的に作成する手法を構築し、その試作システムCLARSを開発するとともに、クラウドサービスとしての展開も進めています。

2.行路作成

● 数理最適化手法による作成

行路作成を「集合被覆問題」と呼ばれる数理モデルでモデル化し、「数理計画」と呼ばれる形の数式で表して、最新の高性能な数理計画ソルバーにより問題を解くという方法で、高速に行路計画を作成します。

● 要員数の最小化

仮に設定した「効率性評価式」の上で、効率の良い(と思われる)行路計画を作成します。作成された行路計画に対する交番作成を試行し、要員数を推定します。「効率性評価式」には、値を調整可能な複数のパラメータが含まれていて、それらの値を変えて①~②を繰り返すことによって、②で推定する要員数が最小となるパラメータの組合せを探索します。③で求めた「効率性評価式」の上で作成した行路計画が、推定される要員数が最小となる行路計画となります(図1)。

3.交番作成

● 乗務員の勤務と乗務員交番表

乗務員交番表は、交番組の勤務順序(交番)を定めた表です。乗務員交番表の作成は、ダイヤ改正時に乗務員の行路計画に続いて実施されます。その際、勤務の順序が乗務員にとって過酷にならないように規程類で制限されています。例えば、休養日明けの早朝勤務の禁止、乗務時間に応じた休養の確保、深夜時間帯に乗務する勤務の連続に関する制限などです(図2)。また、グループによって労働条件に偏りが生じないように考慮することも必要です。そこで、各グループに行路を割り振る段階で、グループ間の労働条件の平準化が必要になります。また、始発列車、最終列車を受け持つ行路、特殊な列車に乗務する行路、受け持ちの少ない線区を担当する行路など、同類の行路が同じグループに偏らないように配分する必要があります。このように、乗務員交番表の作成は複雑で厳しい条件を満たすように行路の振り分けおよび勤務順序の決定を行う、非常に多くの時間と労力を必要とする作業です。

● 乗務員交番表の自動作成

この複雑な乗務員交番表をコンピュータで自動的に作成する手法を開発し、その試作システムCLARSを開発しました。このシステムでは、コンピュータが完全自動で交番表を作り、それを担当者が見て不満や要求があればその箇所を指摘します。指摘されたコンピュータは先の交番表を元に作り直します。このようにこのシステムでは、完全自動作成でありながら人間との対話機能を重視する、新しいコンセプトを提案しています。また、最近では本手法をクラウドサービスとして展開する取り組みも進めています。

参考文献

  1. 坂口隆,加藤怜,福村直登:要員効率に着目した乗務員運用計画の作成手法、鉄道総研報告、第27巻、第2号、pp.11-16、2013.02
  2. 坂口隆、加藤怜:最適化手法を用いた乗務員運用計画の効率向上、JREA、Vol.55、No.8、2012
  3. 坂口隆:制約論理プログラミングの探索手法と対話型スケジューリング、オペレーションズ・リサーチ、Vol.47、No.2、pp.16-21、2002