輸送障害が旅客に与える経済損失の評価手法

大都市圏の鉄道に輸送障害が発生した時に、旅客が被る経済的な損失の評価手法を開発しました。

1.概要

人身事故などの理由で鉄道路線に輸送障害が起きると、その列車に乗車中、もしくはこれから乗車する予定の旅客は、時間や費用の損失というような影響を受けます。不特定多数の鉄道利用者が広域にわたり存在する大都市圏で、多くの列車が運休や遅延した場合、その損失の総規模は莫大なものとなります。本研究では、輸送障害時における旅客の時間価値を評価指標として、輸送障害が旅客全体に及ぼす損失の規模を、金額換算して把握する手法を開発しました。時間価値とは、旅客にとっての1分の価値を、金銭価値に換算したものです。

2.輸送障害に像遇した旅客の選択行動

実際に輸送障害に遭遇した旅客から、その際の行動に関するデータを収集しました。データの収集方法は、旅客が輸送障害に遭遇した当日中にデータを収集できるようにするため、インターネットを利用したアンケート調査を適用しました。

アンケートで収集したデータを集計すると、輸送障害に遭遇した旅客のうちの76%は、そのまま再開を待ち、16%はその他の鉄道路線に迂回するという結果が得られました。これより、旅客の大半は、輸送障害に遭遇した場合でも、あくまで鉄道を利用した移動を選択していたと言えます(図1)。

次に、他の鉄道路線に迂回した旅客に着目してデータを集計すると、そのうちの35%は、追加の運賃を支払って、迂回した鉄道路線を利用したという結果が得られました(図2)。さらに、再開を待った旅客に着目してデータを集計すると、そのうちの49%は、「他の鉄道路線へ迂回すると運賃の追加支払いが発生する」、と考えていたという結果が得られました(図3)。このように、「迂回」か「待ち」かの選択に係わらず、旅客は運賃の追加支払いを考慮して、選択をしていたと言えます。

図1 輸送障害に遭遇した時にとった行動
図2 他の鉄道路線へ迂回した時に追加で支払った運賃額
図3 「待ち」旅客が予想した迂回時の追加の支払運賃額

3.旅客が被る経済的損失の算出方法

アンケート調査の結果をもとに、輸送障害時における旅客の選択行動モデルを構築して、そのモデルから、輸送障害時における旅客の時間価値を計測しました。このモデル説明変数は、所要時間と迂回した場合に支払が必要となる追加運賃であり、所要時間のパラメータを、追加運賃のパラメータで除することで、輸送障害時における旅客の時間価値を、算出することができ、表1はその結果を示しています。(図4、表1)

ケーススタディとして、平日の通勤時間帯である朝7時半に輸送障害が発生し、1万人の旅客が平均30分の遅延の影響を受けた場合における、旅客全体の経済損失額を算出してみます。この時の旅客の時間価値は、32.8円/分であることから(表1より)、旅客一人当たりの経済損失額は、32.8円/分×30分=984円となります。そして、この値に影響を受けた旅客の総数である1万人を乗じることで、旅客全体の経済損失額を算出することができ、その値は約1,000万円(984円×10,000人=984万円)となります。

図4 輸送障害に遭遇した旅客の選択行動モデル
表1 平休日の時間帯別の時間価値

4.手法の活用方法

本研究で開発した評価手法は、「お客様にどの程度のご迷惑をかけたか」という輸送障害の規模を示す指標として用いることができるほか、輸送障害対策として施工する、各種設備投資の判断材料などに活用することができます。

参考文献

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