都市間公共交通ネットワークの評価手法

相反する複数の政策・施策的目標を考慮した、都市間公共交通ネットワークの評価手法を開発しました。

1.概要

少子高齢化や人口減少が進行している我が国においては、幹線鉄道を含む既存の都市間公共交通ネットワークを適切に評価し、その効率的な利用を検討することが重要です。都市間公共交通ネットワークの評価に関する従来の研究では、1つの政策目標の最適化をターゲットにしたものがほとんどですが、実際の幹線交通政策においては、「利用者利便性の向上」と「環境負荷の低減」のように相反する複数の社会的な要請に応えられるようなネットワークのあり方を検討することが求められています。

そこで本研究では、日本全国の幹線旅客交通網を対象に、数理最適化手法を用いて、設定した複数の政策・施策的目標を最適化する各路線の運行本数の組み合わせを提案する手法を開発しました。

2.最適化手法の構築

2つ以上の複数の目的関数を最適化する際には、最良といえる解が必ず一つに定まるとは限りません。この場合、他のどの解にも劣っているとは言えない解の集合を得ることが出来ます。この解をパレート最適解といいます(図1)。

本研究では、対象とするネットワーク上の各路線の運行本数の組み合わせ案を、遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithms:GA)を用いたシミュレーションにより複数作成し、設定した評価値に基づいて、パレート最適解となる各路線の運行本数の組み合わせを出力するシステムを開発しました(図2)。

ネットワーク上の都市間を移動する各経路には、複数の幹線交通機関を組み合わせて利用する混合経路が存在しています。混合経路を含むネットワーク上の経路選択確率の算出には、本研究室で開発した改良型C-Logitモデルを適用しています。なお、改良型C-Logitモデルについては、幹線交通機関の乗り継ぎを考慮した経路選択行動モデルをご覧ください。

図1 2つの目的関数の最大化問題におけるパレート最適解の例
図2 遺伝的アルゴリズムを用いたパレート最適解となる運行本数の組み合わせの算出フロー

3.手法の適用と分析結果の考察

新幹線、在来線特急列車、航空、幹線バスの各交通機関を反映させた、日本全国の都市間公共交通について、運行本数や運賃・料金などサービス水準データを整備し、対象とする日本全国の都市間交通ネットワークを構築しました(図3)。このネットワークに対して、二酸化炭素排出量の最小化と、利便性向上効果を貨幣換算した指標である消費者余剰の最大化と2つの目標を設定して、パレート最適解となる各路線の運行本数の組み合わせを算出した結果を図4に示します。利用者利便性を重視するネットワークから、環境負荷の低減を重視するネットワークまで、様々な運行本数の組み合わせ案が算出されました。

様々な運行本数の組み合わせ案の中から、両方の評価値が改善しているもののうち、最も利便性向上効果の高かったものの結果を図5に示しました。色とりどりの線は、現状のネットワークの運行本数に対するシミュレーションで得られた最適な運行本数の差分を示しています。この結果から、幹線交通機関は相互に連携しサービス供給を行うことが重要であるという示唆が得られました。

図3 構築したネットワークのイメージ
図4 算出されたパレート最適解の分布
図5 一つの分析例における現状と最適状態における運行本数の差分

5.特色・活用例

本手法は、現状のネットワークを基準としたネットワークの評価だけでなく、人口・経済状況の将来変化や、交通路線の新規開業や廃止を想定した場合のネットワークの評価を行うことも可能です。また、現状のネットワークと、最適なネットワークにおける各駅の乗換旅客数を比較することで、円滑な交通ネットワークの実現を阻害している「ボトルネック駅」を抽出することが出来ます(図6)。

図6 乗換旅客数の比較によるボトルネック駅の抽出

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参考文献

  1. 渡邉拓也、柴田宗典、鈴木崇正:多目的最適化に基づく都市間交通ネットワークの評価手法に関する研究、土木計画学研究・講演集、Vol.51、CD-ROM、2015
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