含水率、中性化残り、塩化物イオン量、気温を用いた鉄筋腐食速度の推定法
1.はじめに
コンクリート構造物を適切に維持・管理するためには、鉄筋腐食の状態と今後の進行性の把握が必要であり、コンクリートの品質や状態から鉄筋腐食速度を定量的に評価する手法を提案しました。
2.鉄筋腐食速度の推定式
今までの研究成果から、鉄筋腐食に及ぼす因子として、含水率、中性化残り(=鉄筋かぶり-中性化深さ)、塩化物イオン量、気温を選定し、これらの量から鉄筋腐食速度を推定する式(経験式)を考案しました(式(1)、式(2))。
V0 = 0.840W - 0.145C + 1.32Cl + 0.0293W・C - 0.0917C・Cl+0.0658Cl・W - 2.32 | 式(1) | |
V = ( 1 + 0.0381 (T - 20) )V0 | 式(2) |
ここで、
V0:気温20℃の鉄筋腐食速度(mg/cm2/年)
V:気温補正した鉄筋腐食速度(mg/cm2/年)
W:コンクリートの含水率(%)
C:中性化残り(mm)(=鉄筋かぶり-中性化深さ)
Cl:コンクリートの塩化物イオン量(kg/m3)(鉄筋位置)
V:気温補正した鉄筋腐食速度(mg/cm2/年)
W:コンクリートの含水率(%)
C:中性化残り(mm)(=鉄筋かぶり-中性化深さ)
Cl:コンクリートの塩化物イオン量(kg/m3)(鉄筋位置)
3.推定式を用いた診断例
上記の推定式を用いてコンクリート構造物の診断を行った例は以下の通りで、雨がかりのない場所(含水率3%程度)では、鉄筋かぶりが13mm程度以下の箇所で、2015年の腐食量は50mg/cm2(ひび割れ発生限界腐食量)を超えており、ひび割れや浮きが生じている(図1)。また、雨かかりの場所では、コンクリートの含水率は4~5%と上昇し、この箇所では鉄筋かぶりが20mmの箇所であっても、現在の腐食量は50mg/cm2を超えており、ひび割れや浮きが生じている(図2)。この結果から、中長期の補修計画が作成可能となりました。
参考文献
- 土木学会:コンクリート中の鋼材の腐食性評価と防食技術研究小委員会(338委員会)成果報告書(その2)およびシンポジウム論文集、コンクリート技術シリーズ99、2012.10
- 飯島亨、工藤輝大、玉井譲:コンクリート中の鉄筋の腐食速度に及ぼす気温の影響、鉄道総研報告、第23巻、第6号、pp.11-16、2009.06