化学反応に基づくコンクリート構造物の劣化機構解明と評価

コンクリート構造物の劣化には、一般に水や酸素の存在が大きく影響しますが、これまでの維持管理の体系にはこれらの影響が明確には取り入れられていませんでした。そこで、これらの影響を取り入れた維持管理体系を構築することを目指し、そのための基礎的な検討を行っています

1.はじめに

コンクリート構造物の劣化には、一般に水や酸素の存在が大きく影響しますが、これまでの維持管理の体系にはこれらの影響が明確には取り入れられていませんでした。そこで、これらの影響を取り入れた維持管理体系を構築することを目指し、そのための基礎的な検討を行っています。

2.コンクリート中における水と酸素の挙動

コンクリート中における水と酸素の挙動を明らかにするために、現地調査やコンクリート試験体を用いた検討を行っており、これまでに以下のような成果が得られています。

  1. コンクリートに作用する雨水等が影響する深さを知るために、コンクリートへの浸透および逸散に及ぼすコンクリート品質の影響を調べた結果、品質により浸透深さが大きく異なること(図1)、水の浸透は深さ30mm程度までは養生の影響が大きく、その内側では配合の影響が大きいこと、乾燥時の水分逸散は配合や養生方法によらず浸透した水の量に依存することがわかりました。また、コンクリートと断面修復材との界面における水分浸透抑制に対する下地処理の効果を明らかにしました。
  2. 鋼材の腐食速度はコンクリートの含水率が増加すると大きくなる傾向にあり、この傾向は腐食環境にある鋼材で目立つこと、鋼材腐食に及ぼす初期溶存酸素の影響は、塩化物イオン量が多いと初期溶存酸素の増加に伴い鋼材の腐食速度が増すこと(図2)がわかりました。
  3. アルカリシリカ反応に関する検討では、打設後8週間程度までにアルカリが消費されてpHが低下し、この段階での反応の進行はコンクリートの環境湿度によらないこと、その後の膨張の進行はpH低下に比べて遅く、この段階では環境湿度が影響を及ぼすことがわかりました。

図1 水分浸透深さの経時変化(測定例)
図2 鉄筋腐食速度に及ぼす初期溶存酸素の影響

参考文献

  1. 鈴木浩明、上田洋:コンクリートの品質が水分浸透深さの時間依存性に及ぼす影響、コンクリート工学年次論文集、Vol.36、No.1、pp.676-681、2014
  2. 鈴木浩明、玉井譲、上田洋:コンクリート表層における水分浸透深さの時間依存性及び水セメント比と養生の影響、コンクリート工学年次論文集、Vol.35、No.1、pp.1807-1812、2013
  3. 上田洋:コンクリートへの水分浸透および逸散性状に関する実験的検討、土木学会第67回年次学術講演会講演概要集、V部門、pp.253-254、2012
  4. 鈴木浩明、玉井譲、上田洋:補修時のコンクリートの下地処理が断面修復材との界面の物質移動抵抗性に与える影響、土木学会第67回年次学術講演会講演概要集、V部門、pp.313-314、2012
  5. 玉井譲、鈴木浩明、上田洋:配合および養生がモルタルの水分吸収特性におよぼす影響、コンクリート構造物の補修、補強、アップグレート論文報告集、Vol.12、pp.181-186、2012
  6. 鶴田孝司、上原元樹:アルカリシリカ反応によるモルタルのpHと膨張量、無機マテリアル学会第125回学術講演会講演要旨集、pp.62-63、2012
  7. 玉井譲、上田洋:水セメント比および養生条件がコンクリート内部の含水状態に与える影響、土木学会第66回年次学術講演会講演概要集、V部門、pp.561-562、2011
  8. 飯島亨、玉井譲、上田洋、横田優:コンクリート中の鉄筋の腐食速度におよぼす含水率の影響、コンクリート構造物の補修、補強、アップグレート論文報告集、Vol.11、pp.141-146、2011
PAGE TOP