コンクリート表層部の品質の簡易な診断手法

コンクリート材料研究室で開発した、コンクリート品質の簡易な非破壊評価手法である「散水試験」の紹介

1.はじめに

鉄道を支える高架橋などの構造物に使われるコンクリートには、構造材料としての強さだけでなく、構造物を永く使い続けるための耐久性(品質)が求められます。私たちは、鉄筋コンクリート構造物の耐久性を左右する「コンクリート表層部の緻密さ」を、「現場で」「手軽に」調べるための方法を研究しています。

2.コンクリートの強度=耐久性?

鉄筋コンクリート構造物は、骨組みとなる鉄筋をコンクリートが中に包み込んで一体となって造られています。これまでは、コンクリートの「品質」と言えば、製造時に取り分けて造られたテストピースの「圧縮強度」(=強さ)が、品質を代表するものさしとして考えられてきました。つまり、一定の強さがあればよい品質のコンクリートである、という考え方です。しかし、テストピースの「強さ」だけでは、実際の構造物で中に包み込んだ鉄筋の腐食を防ぐためのバリアーとしての性能、つまり、構造物としての「耐久性」についての評価は不十分だということが分かってきました。

3.実構造物の手軽な診断手法「散水試験」の提案

コンクリートが鉄筋を守るバリアーとして機能するためには、コンクリートの表面付近(表層部)の緻密さが重要になります。鉄筋コンクリート構造物を劣化させる原因となる水や塩分などを内部へ侵入させないようにするためです。私たちは、テストピースではなく実際の構造物で、コンクリートの表層部の緻密さを「現場で」、「手軽に」診断するための技術を検討しています。私たちの研究のこれまでの成果は、(公社)土木学会、(公社)日本コンクリート工学会、(一社)セメント協会などに報告しています。

最近の研究成果としては、コンクリートの表面に少量の水を散水し、水の吸い込み具合を目で見たり、計測器で色の変化を測ったりして評価することで、コンクリート表層部の緻密さを手軽に評価する「散水試験」という技術を考案しました。「散水試験」は、電源設備などが不要でかつ1名で測定ができ、作業性に優れるため実際の構造物への適用が容易です。数多くの測定個所を一次的にスクリーニングする簡易診断技術として活用できますので、構造物に施工されたコンクリートの品質確認や、これから施工されるコンクリートの品質向上に役立つことが期待されます。

図1 散水試験の概要

関連ページ

参考文献

  1. 西尾壮平、上田洋、岸利治、半井健一郎:コンクリート構造物の鉛直面における散水時の水の流下現象による表層品質の簡易評価、土木学会第70回年次学術講演会講演概要集、V-437, pp.873-874, 2015
  2. Sohei NISHIO, Hiroshi UEDA and Toshiharu KISHI, “A simple non-destructive evaluation method for the cover concrete quality by spraying small amounts of water onto the concrete surface,” IALCCE 2014, pp.1176-1181, 2014
  3. 西尾壮平、上田洋、岸利治:コンクリート表面における散水時の明度変化特性および水の流下特性による表層品質の非破壊評価、セメント・コンクリート論文集、No.66、pp.303-310、2013
  4. 西尾壮平、上田洋、岸利治:コンクリート表面における散水時の明度変化と水分の挙動に関する基礎的検討、コンクリート工学年次論文集、Vol.35、No.1、pp.1807-1812、2013
PAGE TOP