摩耗—疲労バランスを考慮した熱処理レールの開発

曲線外軌の摩耗や損傷を抑制するため、レール強度(硬さ)を変えた熱処理レールを開発し、性能評価を進めています。

1.はじめに

列車が曲線を通過する際、外軌には横圧や車輪フランジのすべり接触によって摩耗が促進されます。その摩耗を抑制するために、曲線外軌には普通レール(硬さ:260HB)よりも硬い熱処理レール(硬さ:340HB)が敷設されています。

熱処理レールは耐摩耗性に効果を発揮していますが、近年、熱処理レールが敷設された曲線半径が600mから800mの外軌において、損傷が多発しています(図1、ゲージコーナき裂と呼びます)。

曲線外軌の損傷として、きしみ割れとゲージコーナき裂に大別されます。きしみ割れは、レール幅方向のある範囲に存在する短いき裂であり、列車進行方向に対して一定の角度を持ち、一定の長さまで進展すると停留することが一般的です(図2)。一方、ゲージコーナき裂は、水平裂、横裂へと進展し、最終的に折損に至る損傷です。ゲージコーナき裂は、きしみ割れと混在する場合が多く、曲線内で群発する傾向にあります。そのため、隣接するゲージコーナき裂からの水平裂が重畳し、レール頭頂面からの超音波探傷検査による横裂の検知が困難であることからき裂の管理が難しく、損傷発生の対策が望まれていました。

図1 ゲージコーナき裂
図2 きしみ割れ

2.新型熱処理レールの開発

曲線外軌に発生するゲージコーナき裂を抑制するための材料的アプローチとして、強度を変化させた新型熱処理レールを開発しました。

熱処理レールに発生するゲージコーナき裂の発生傾向は、曲線半径600mから800mで高いことから、レール強度(硬さ)の適切な選択によって抑制できるものと考えました。現在、通常選択できるレール鋼種は普通レールおよび熱処理レールの2種類しかありません。ゲージコーナき裂を抑制するためには普通レールを選択することになりますが、普通レールでは摩耗速度が速いため摩耗交換の頻度が高くなることが予想されます。そこで、新たに熱処理レールを開発しました。

新型熱処理レールは、2つのコンセプトで計4種類であります。これらは、金属疲労の蓄積の抑制が達成できる程度に摩耗促進させることを目指した「摩耗—疲労バランス型」として硬さの異なる3種類(硬さ:285HB、300HB、315HB)と、強度向上によって疲労の前駆現象である塑性変形を抑制して金属疲労を蓄積しにくくすることを目指した「疲労抑制型」として1種類(硬さ:370HB)です。表1に試作した新型熱処理レールの仕様を、図3にコンセプトの模式図を示します。

現在、開発した新型熱処理レールの敷設試験を継続しており、ゲージコーナき裂に対する性能評価を進めています。

表1 新型熱処理レールの諸元
図3 新型熱処理レールのコンセプト

参考文献

  1. Yoshikazu KANEMATSU, Motohide MATSUI:Development and evaluation of the rail steel grade for damage restraint to the high rail in curve sections, Proceedings of the 10th International Conference of Contact Mechanics and wear of Rail/Wheel Systems (CM2015), 2015
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