脱線しにくい台車-輪重減少を抑制する台車-

鉄道車両が急曲線の出口側緩和曲線部などの軌道平面性変位の大きな箇所を走行する際に、進行方向先頭軸の曲線外軌側の車輪では輪重が通常よりも大きく減少することがあります。この時、大きな横圧が加わると、車輪はレールに乗り上がり、脱線に至る危険性が生じます。このような乗り上がり脱線を防止するためには、横圧の低減や輪重減少の抑制が有効であると考えられます。

鉄道総研では、輪重減少の抑制により乗り上がり脱線を防止するという観点から、輪重減少抑制台車と呼ぶ新しい在来線用台車を開発しました(図1)。輪重減少抑制台車は、側ばりと横ばりが回転機構により接合された3ピース構造の台車枠(図2)を採用しており、回転機構により側ばりが自由にピッチング(図3)することで、台車が軌道平面性変位へ追従し、輪重減少が抑制され、乗り上がり脱線に対する安全性が向上します。この特徴的な台車枠と一部の台車部品を除いては、一般的な台車と変わらぬ構造となっており、従来の多くの台車部品との互換性を有しています。

輪重減少抑制台車の基本性能を確認するため、鉄道総研試験線の曲線部の出口側緩和曲線を対象とした走行試験を実施しました。その結果、台車枠の側ばりと横ばりが溶接で剛に結合された一般的な構造の台車に比べ、最大で約4割の輪重減少抑制効果を確認しました(図4)。また、車両試験台でのだ行動試験を行った結果、300km/hまでの速度域において良好な走行安定性を有しており、台車枠の回転機構が走行安定性に影響を及ぼさないことを確認しました(図5)。さらに、台車枠回転機構部に採用した、本台車固有の部品であるすべり軸受の耐久性を調査するため、摺動試験装置を用いたベンチ試験を実施しました。その結果、一般的な台車検査周期である60万kmに相当する試験時間におけるすべり軸受の摩耗量は、摺動層厚さの1割程度であり、十分な耐久性を有していることを確認しました(図6)。

参考文献

  1. 鈴木貢、宮本岳史、飯田忠史、鴨下庄吾、梅原康宏、佐藤祐三:3ピース構造台車枠を用いた輪重減少抑制台車の開発、鉄道総研報告、第27巻、第12号、pp.17-22、2013.12