超異方倍率レンズによる電車線振動計測

超異方倍率レンズは縦方向と横方向の倍率が異なるレンズで、このレンズを使用して縦方向にのみ映像を拡大することで、電車線の振動を数10mの範囲にわたって測定することができ、パンタグラフ通過時に電車線に引き起こされる波動を視覚的に確認できるだけではなく、画像解析によりトロリ線の押上量や概算接触力なども測定可能です。

1.はじめに

電車線は柔軟構造物であるため、電車線とパンタグラフの動的挙動を把握するためには、パンタグラフによってトロリ線などの線条に励起される波動の観測が重要となります。しかし、波動はハンガ点や支持点などで反射するため、その振動形態は複雑です。そのため、伝搬する波動を従来の離散点のセンサで観測するためには、電車線に多数のセンサを取り付ける必要がありますが、これは現実的ではありません。一方、地上から画像によって電車線挙動を撮影できれば、空間的な現象を定量的に捉えることが可能となります。しかし、電車線振動は長波長、小振幅(代表的には波長100mで振幅100mmのオーダ)ですので、一般的な撮影機器では測定できません。そこで、画像の左右方向の倍率が上下方向の約1/80となる超異方倍率レンズ(図1)を開発しました。このレンズを使用して、電車線・パンタグラフ系の運動をハイスピードカメラなどで撮影すると、電車線の空間的な振動分布や、各線条に波動が伝播していく様子を定量的に把握できます。

図1 異方倍率レンズによる電車線観測

2.測定概要

図2にパンタグラフ通過時の電車線を線路外から、ヘビーコンパウンド架線を超異方倍率レンズを用いて撮影した例を示します。図2は画面水平方向が約30mに対して、垂直方向が約300mmとなっています。このような画像から、トロリ線の押上量やひずみ、ハンガ軸力、電車線・パンタグラフ間の接触力などを測定することも可能です。

図2 超異方倍率レンズで観測した電車線の画像

3.測定結果

トロリ線の押上量を、電車線に設置したセンサと画像によりそれぞれ測定した結果(図3)から、押上量は画像でも精度良く測定できることがわかります。また、画像から推定した接触力とパンタグラフで測定した接触力を図4に示します。本結果より、画像から推定した接触力には誤差が含まれるものの、大まかな傾向を捉えることが可能であることが確認できます。

図3 トロリ線の押上量の測定結果
図4 接触力推定結果

参考文献

  1. 真鍋克士、市毛彰、青木光弘:超異方倍率レンズを使用した架線振動観測装置の開発、鉄道総研報告、第9巻、第9号、pp.49-50、1995.09
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