固有振動によるロングレール軸力測定法

1.はじめに

ロングレールの温度伸縮によって作用する軸力は夏季の張り出し、冬季のレール破断に繋がる可能性があるため、その値を正確に測定して適切に管理することが望まれています。ロングレールの軸力を定量的かつ簡易に測定する手法として、レールの固有振動数が軸力によって変化する性質に着目し、固有振動数の測定結果から軸力を推定する手法を開発したので紹介します。

2.固有振動による軸力測定法

軸力の測定方法は図1に示す通りで、現場にてレール頭部を加振し、その加速度応答の周波数分析より固有振動数を測定し、解析で得られる固有振動数と軸力の関係より軸力を推定します。固有振動数の測定状況の写真を図2に示しますが、固有振動数は短時間で測定でき、かつ測定機器の携帯も容易です。

本法にて十分な軸力推定精度を得るためには、固有振動数と軸力の関係を解析上で正確に求めておく必要があります。しかし、固有振動数と軸力の関係は、まくらぎ間隔やレール摩耗、締結装置部の温度によって変化するため、現場にてこれらの情報を取得し、それを基に補正を行っています。

3.現場での軸力測定試験

実際のロングール軌道で固有振動数と軸力の関係を測定し、解析値と比較しました。結果は図3に示す通りで、軸力が固有振動数に比例していることが分かります。また補正を行うことで、現場の固有振動数と軸力の関係を解析上で概ね再現することができました。

4.今後について

固有振動数と軸力の関係は、周辺の温度によって変化することが分かっており、温度が低い条件では十分な推定精度が得られていません。また、締結装置によっても差が生じますので、今後は広い温度領域や様々な軌道構造に対しても適用できるよう検討を進めます。

参考文献

  1. 浦川文寛、阿部和久、高橋寛:固有振動に着目したレール軸力測定手法の精度向上、鉄道総研報告、第29巻、第8号、pp.41-46、2015.08