強風時に車両に働く空気力の解明と対策

1.はじめに

 強風による列車の脱線・転覆事故を防止するため、ソフト面(運転規制等)とハード面(防風柵等)からの対策が行われており、対策を考える際、横風に対する車両に働く空気力を精度良く評価することが必要になります。鉄道総研では、各種車両形状と地上構造物(高架橋や盛土など)との組み合わせによる風洞試験を実施し、車両に働く空気力を推定してきました。

2.車両に働く空気力の解明

 風洞試験結果に基づく自然風下の車両に働く空気力評価を検討するため、自然風と実物大模型に働く空気力を観測する現地試験(図1)を行うとともに、乱流境界層(自然風の特性を再現した風)を用いて実物大試験を可能な限り再現した1/40縮尺模型の風洞試験(図2)を行いました。それぞれの試験結果を評価することで風洞試験の有効性を確認しました(図3)。本研究の一部は、国土交通省の補助金を受けて実施しました。
 また、鉄道総研では構造物形状が高架橋以外の、例えば盛土の場合についても風洞試験を実施しています(図4)。

3.強風対策

 鉄道会社において、強風時の走行安全性の向上を目的とした場合や、頻繁な運転規制などによる安定運行の阻害の軽減を目的とした場合に、ハード面からの強風対策として防風柵の設置があります。例えば、高架橋等に設置する防風柵の効果を風洞試験(図5)により評価して防風柵の仕様を検討しており、安全な運行に寄与しています。

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参考文献

  1. 種本勝二、鈴木実、斎藤寛之、井門敦志:在来線車両の空気力係数に関する風洞試験結果、鉄道総研報告、第27巻、第1号、pp.47-50、2013.01
  2. 種本勝二、鈴木実:車両が横風から受ける力を測る、RRR、Vol.68、No.8、pp.22-25、2011.08