トンネル内車両動揺

高速列車がトンネル内を走行する際に生じる左右方向の空力動揺について空気力学的研究を行っています。

1.トンネル内車両動揺現象の概要と対策法

近年、列車の高速化に伴い、乗り心地の面から、トンネル内走行中の車両の左右動揺が問題になりつつあります。この動揺の原因として、当初、軌道変位(レールのゆがみ)の影響が考えられました。しかし、調べてみると、軌道変位がある地点と列車が揺れる地点が一致しませんでした。そこで、改めて、空気力の影響に注目し、そのメカニズムを解明するために、実際の列車を使っての測定、風洞試験そして数値シミュレーションを行ってきました。その結果、トンネルの中では大きな空気力が列車側面に働き、列車を左右に揺らしていることがわかりました。この空気力は、パンタグラフカバーや後尾部からの流れの剥離や列車床下付近から発生する流れの乱れによって引き起こされているものです(図1)。この空気力発生を小さくするような車両形状を風洞試験によって研究しています(図2)。車両下部の角を丸くしたり、側面にフィンをつけると空気力発生が抑えられることがわかってきました(図3)。

図1 列車床下付近から発生し、列車側面に発達する渦の様子
(左はトンネルと列車の断面図。右は赤線で示した断面を矢印方向から見ている。)
図2 変動空気力を評価するための風洞試験装置
図3 空気力発生を小さくする車両形状の例

2.トンネル内走行時の車両に働く空気力と左右運動の解析的な検討

トンネル内走行時における高速列車の中間車両に働く空気力と左右運動について、解析的な検討を行いました(図4)。車両側面に加わる空気力は列車の長手方向に伝播する正弦波動で、また、列車はばねとダンパーでつながれた2自由度の剛体で、それぞれモデル化しました。その結果、正弦波動を用いることにより、実物列車での走行試験で得られた空気力の特徴が説明出来ること、過去に走行試験から推定された編成車両間の運動を定性的に説明出来ること、そして、圧力波動の波長が編成内車両間の運動の位相をコントロールしていることが分かりました。本解析手法は、数百自由度を持つ編成車両の運動と流れ場を同時に計算するような、いわゆる大規模な数値シミュレーションによる現象再現のアプローチとは異なり、むしろ、現象に関係すると思われる必要な部分のみに着目し、出来るだけ単純なモデル化を行うことにより、現象理解を容易にしています。

図4 トンネル区間における編成内の車両間の姿勢
(空気力の波長33.3m)

3.トンネル内の車両に作用する変動空気力発生メカニズムの解明

トンネル内走行時の車両動揺は、車両に作用する変動空気力による可能性が指摘されてきましたが、変動空気力の発生メカニズムは明確になっていませんでした。

まず、現象の簡単な明かり区間における車両周りの流れの数値シミュレーションを、床下の台車位置に小規模の切欠きをつけた6両編成の高速車両を模擬した単純形状モデルを用いて実施しました。その結果、モデル床下の流速は、モデル側面の流速より遅くなり、両者に速度差が発生し、その速度差によりカルマン渦列(千鳥配置の渦列)と同様の大規模渦構造が形成され、これにより床下に蛇行流れ(左右方向の流速変動)が発生することを明らかにしました(図5)。

同様の数値シミュレーションをトンネル区間に対して実施したところ、モデル床下の蛇行流れはトンネル壁面に沿ってモデル側面にまで達しており、これがトンネル走行時に車体に作用する変動空気力の発生原因となっていることを推定しました(図6)。

数値シミュレーションで予測した床下の蛇行流れは、風洞試験でもその存在を検証できました。

図5 蛇行流れの発生メカニズム
(車体側面変動空気力の発生)
図6 明かり走行・トンネル走行で発生する蛇行流れ

参考文献

  1. 中出孝次、井門敦志:単純形状モデルを用いた鉄道車両床下流れの数値シミュレーション、日本機械学会流体工学部門講演会講演論文集、GS43、2014
  2. 中出孝次、佐久間豊:トンネル内を走行する鉄道車両周りの流れのLES、日本流体力学会年会講演論文集、149、2014
  3. 佐久間豊、鈴木昌弘:トンネル内走行時の中間車両に働く空気力と左右運動の解析、鉄道総研報告、第20巻、第8号、pp.41-46、2006.08
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