マイクロホンアレイ

鉄道からは様々な騒音が発生します。車輪がレール上を転がる時に生じるゴロゴロという転動音、ポイント等通過時に発生するガシャンという衝撃音、鉄橋などからの構造物音や高速で走行する新幹線から発生する空力音などがあります。これらのうち、衝撃音や構造物音などは比較的明確に音源位置などを判断することができます。しかし、例えば、一列車に分布する空力音源のうち、どこからどれぐらいの大きさの音が発生しているかを正確に把握することは簡単ではありません。そこで、音源解析装置としてマイクロホンアレイの開発を進めています。

マイクロホンアレイとは、複数の無指向性マイクロホンを平面上に配置し、各マイクロホンにおける音圧出力に適切な遅延時間および重み付けをして足し合わせることで特定の方向に鋭い指向性を持つ装置です。マイクロホンアレイには、(1) 指向特性が周波数に依存する、(2) 虚像音源(本来の音源とは異なる位置の見かけ上の音源)が生じること、等の特性があります。そこで、当研究室ではマイクロホンの配置を工夫し、これらの影響を受けにくいマイクロホンアレイの開発を行いました。

図1は1次元マイクロホンアレイの概観です。1次元マイクロホンアレイでは、マイクロホンをレール方向に1次元的な配列とし、列車の1次元音源分布を測定します。図2は、新幹線車両が通過した際のレベル変動です。パンタグラフ位置および先頭位置に大きなレベルピークが観測され、これが大きな音源となっています。また、各号車間の隣接2台車を含んだ車両間隙部付近に対応した位置にもレベルピークが観測されています。

図3は2次元マイクロホンアレイの概観です。2次元マイクロホンアレイでは、車体側面と平行な平面にマイクロホンをら旋状に配置することによって車両の2次元音圧分布を測定します。2次元マイクロホンアレイによる測定は、鉄道車両からの騒音のように2次元的に分布した音源位置を特定するためには特に有用です(図4)。

これらのマイクロホンアレイによる測定を実施し、鉄道沿線で観測される騒音の音源特定、音源別評価などに効果を上げています。

参考文献

  1. 長倉清:(鉄道技術 来し方行く末:第23回)鉄道騒音の測定・音源解析方法 RRR,Vol.71,No.2,pp.28-31,2014.02
  2. 山崎展博、長倉清、池田充:2次元マイクロホンアレイを用いたパンタグラフの音源探査、鉄道総研報告、第17巻、第11号、pp.1-6、2003.11
  3. 長倉清:新幹線騒音の音源解析法、鉄道総研報告、第10巻、第2号、pp.29-34、1996.02