ヒューマンエラーの発生メカニズム

ヒューマンエラーの種類や個人差(性差、年齢差)について実験結果を基に解説します。

1.ヒューマンエラーの発生メカニズム

ヒューマンエラーは、正しい行為や判断を行おうとしているにも関わらず、正しい行為や判断が生じなかったり、誤った行為や判断が生じたりしたものをいいます。

これは、人の中で、正しい行為や判断のプログラムが取り出されなかったり、誤ったプログラムが取り出されたりするために生じます。また、このような事態が発生するためには、注意が正しい行為や判断に十分向けられていないという条件が必要になります(図1)。

図1 ヒューマンエラーの発生メカニズムモデル

2.ヒューマンエラーの種類

行為や判断プログラムの取り出し不良には、(a)正しいプログラムが取り出されなかった場合(失念エラー)と(b)誤ったプログラムが取り出された場合が想定できます。さらに誤ったプログラムには、(b1)直前に取り出したために取り出しやすくなっているもの(直前エラー)と、(b2)通常作業での正しいプログラム(エラー場面では作業変更等により違う行為や判断が求められている)(習慣エラー)、(b3)通常作業でも正しくないが効率的なために無意識に習慣化したもの(効率エラー)が考えられます。

正しいプログラムに対する注意の欠損条件には、基本的には他事に注意が逸れた場合と長時間同じものに注意を向け続けたためにぼんやりした場合の2つが考えられます。この他に、別の作業からの急な注意の切り替えが間に合わなかった場合なども想定できます。

これらを組み合わせると一般的なヒューマンエラーを9つに分類できます(図2)。鉄道の運転関係業務における脱線や衝突に関係するエラー(鉄道の重大エラー)には、このうち6種類が関わっていることが分かっています(図2の太枠のエラー)。

図2 発生メカニズムによるヒューマンエラーの分類

3.ヒューマンエラー課題

6種類の鉄道の重大エラーの発生場面、それぞれを模擬した課題(ヒューマンエラー課題)を作成しました。

失念エラーには、一定の時間間隔ごとにキー押しを行う時間ベースの展望記憶課題、習慣エラーには、赤色で表示された「あお」という単語の色の名前(赤)の選択を“文字読み(青)”という習慣を抑制しながら行うストループ課題、効率エラーには、赤色で表示された「あか」という、色と単語が同じ刺激による色名選択練習(文字読みを基に答えた方が効率的なので無意識に効率的習慣が形成される)とストループ課題を組み合わせた課題を用いました。

これらの各課題に、注意のそれ条件として数値の暗唱課題、ぼんやり条件として刺激呈示間隔を長くした監視課題を組み合わせ、ヒューマンエラー課題としました。

図3 ヒューマンエラー課題の例
[習慣エラー(注意のそれ条件)]

4.ヒューマンエラーの個人差:内田クレペリン検査成績

運転適性検査のひとつである(成績中位:a’f、下位:c’f、Fa、a’f-Fa、Fb、Fc、Fp)と各ヒューマンエラー課題の成績を比較しました。その結果、内田クレペリン検査の成績が低い人は、注意のそれ条件において、習慣エラーを起こしやすいことが分かりました。
(注:習慣エラーの起こしやすさは、赤色で表示された「あお」などの刺激(習慣干渉あり刺激)に対する色名選択のエラー数から赤色で表示された「++」などの刺激(習慣干渉なし刺激)に対する色名選択のエラー数を引いた値(ストループ干渉量)を用いました。値が大きいほどエラーを起こしやすいと考えます。)

図4 内田クレペリン検査と注意のそれ条件における習慣エラーの関係

5.ヒューマンエラーの個人差:年齢差

鉄道における運転関係業務を行う年齢を考慮した年齢の高低(若年:平均21.0歳、高齢:平均63.6歳)とヒューマンエラー課題の成績を比較しました。その結果、高齢者は、注意のそれ、ぼんやりの両方の条件において習慣エラーと効率エラーを起こしやすいことが分かりました(図5)。

図5 年齢差と注意のそれ、ぼんやり条件における習慣エラー、効率エラーの関係

6.ヒューマンエラーの個人差:男女差

性別(男性:平均21.0歳、女性:平均20.3歳)とヒューマンエラー課題の成績を比較しました。その結果、どの課題においてヒューマンエラーの起こしやすさに男女の違いは見られませんでした。

上述のデータは、あらかじめ内田クレペリン検査を受けた若年男性309名、若年女性305名、高齢男性404名の中から、成績により選出された、若年男性の中位群15名(平均21.2歳)、下位群15名(平均20.8歳)、若年女性の中位群14名(平均20.6歳)、下位群15名(平均20.0歳)、高齢男性の中位群10名(平均63.7歳)、下位群10名(平均62.4歳)の被験者によるものです。

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