夏季の通勤列車内の温熱快適性予測

夏季の通勤列車内の温熱快適性評価を目的として、人の生理・心理特性を考慮した温熱快適性予測手法を開発しました。

1.はじめに

高温多湿な夏季において、通勤列車内の乗客から「暑い」、「寒い」といった不満の声が多く寄せられています。車内空調環境をより快適にするためには、乗客の温熱快適性を適切に予測し、不快となる状況を明らかにすることが重要です。既存の温熱快適性予測指標として、ISO7730でも採用されているPMV(予測平均温冷感申告)・PPD(予測不満足率)指標がありますが、この指標は建物室内用に開発されたものです。本研究では、車内温熱環境の体感実験を実施し、PMV・PPD指標を通勤車両に適用した場合の予測精度を確認しました。さらに、その誤差要因を検討し、より乗客の感覚に合った予測手法を開発しました。

2.通勤車両を用いた被験者実験

実験は、夏季に、定置状態の通勤車両内で実施しました。延べ約100人の被験者が参加し、営業列車内の温熱環境を模擬した環境下で温熱快適性に関する主観評価を行いました。図1(a)に、本実験でのPMVと実測不満足率の関係を示します。併せて、ISO7730で規定されているPMVとPPDの関係を示しています。PPDと実測値を比較すると、主に2つの誤差傾向が見られます。

  1. PPDは、あるPMVに対して1つに既定されるのに対し、実測値は温度上昇時と下降時とで異なる
  2. PPDの最小値はPMV=0(「温熱的中立」に相当)にあるのに対し、実測の最小値はPMV=-1(「やや涼しい」に相当)付近にある

1.は温熱快適性の変動特性、2.は季節特性(夏季は「やや涼しい」環境がより好まれる)の影響をPMV・PPD指標が考慮していないために生じたものと考えられます。

図1 体感実験での主観評価結果とPMV・PPD指標および提案法との比較

3.通勤列車内の温熱快適性予測手法の開発

本研究では、上述した2つの影響要因を考慮した予測手法を開発しました。この手法は、体温調節機能を有する人体熱モデルに基づく生理応答計算部と、体感実験から得られた回帰モデルに基づく心理応答計算部から構成されます(図2)。本手法の適用により、PMV・PPDで見られた2つの誤差傾向が大きく改善されることを確認しました(図1(b))。本手法は、夏季における通勤列車内の温熱快適性予測・評価に活用できます。

図2 温熱快適性予測モデルの全体像

参考文献

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