鉄道構造物の減衰メカニズムの解明と低減衰構造の抽出法

構造物が低減衰となるメカニズムを大規模観測および数値解析で明らかにするとともに、低減衰に伴う選択共振により、構造物の揺れの増大や車両の走行安全性の低下等が生じる可能性のある弱点箇所を特定する手法、およびダンパー等による補強を行う場合の設計目標を算定する手法を開発しました。

減衰の低い構造物では、地震動と構造物との共振(選択共振)が引き起こされやすく、大きな応答が長時間継続することで、構造物の損傷や車両走行性の低下が生じることが懸念されます。

特に、将来発生が危惧される大規模地震では、広域で強い揺れが生じる可能性が高いため、路線全体の中からこうした弱点箇所となり得る構造物を抽出し、優先的に対策を行う必要があります。

しかし、鉄道構造物の減衰を大規模かつ体系的に実測した事例がなく、構造物が低減衰となる条件やメカニズム、およびこの減衰が構造物や車両走行性に与える影響については十分解明されていませんでした。

そこで、まず構造形式および地盤条件の異なる約140箇所の実構造物の振動観測を行い、実構造物における減衰の同定と発現メカニズムの解明を行いました。

その結果、観測した減衰を、図1のように、構造物天端の揺れを基準とした地盤の揺れの大きさで整理することで、地盤の揺れが構造物の揺れと比べて小さい場合、逸散減衰が十分に発揮されず低減衰となる、というメカニズムを観測結果から明らかにしました。

また、この結果を構造物と地盤の固有周期の比で整理することで、実構造物における下限値相当の減衰を推定する算定図も構築しました(図2)。これらの固有周期は、構造物高さや地盤条件などの設計図書等から簡易に得ることができるため、多数の構造物の減衰を効率的に評価できます。

次に、構造物と地盤の固有周期の組合せに対して、図2の実測減衰を設定した地震応答解析を行い、一般的な耐震設計で想定する減衰5%時の応答に対する構造物の相対的な揺れやすさを表す判定図を作成しました(図3)。

これにより、長大路線中の多数の構造物の中から、低減衰に伴う相対的な弱点箇所を抽出することが可能となりました。

さらに、こうした構造物が揺れやすい弱点箇所では車両走行性の低下も想定されることから、「鉄道構造物等設計標準 変位制限」の規定を満足させるために必要な減衰量の算定図を作成し、ダンパー等により減衰を増加させる対策を行う場合の設計目標を明確にしました(図4)。

以上により、低減衰に伴う弱点箇所の抽出からその対策まで、一連の評価および設計を行うことが可能となりました。

※本研究は国土交通省の鉄道技術開発費補助金を受けて実施しました。

図1 実測による地盤の揺れと減衰の関係
図2 下限値相当の減衰を評価する算定図
図3 低減衰となる可能性がある構造・地盤条件
図4 変位制限標準に基づく必要減衰量の算定図

参考文献

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